うつは、治す努力をやめれば治る

箱庭療法と森田療法の併用の事例と実践

「あるがまま」「お任せ」のこころが病を癒す。7つの事例をもとに、延べ2万人を治療したお寺の診療活動の実践と理論を解説。

著者 大住 誠
出版社 法藏館
ジャンル 入門・お経・実用 > 生・死、福祉・医療
出版年月日 2015/01/20
ISBN 9784831856951
判型・ページ数 4-6・286ページ
定価 本体2,800円+税
在庫 在庫あり
「あるがまま」「お任せ」のこころが病を癒やす。新型うつ、強迫性パーソナリティ障害、境界例、 多重人格など、7つの事例をもとに、延べ2万人を治療したお寺の診療活動の実践と理論を解説。推薦=帯津良一
はじめに

第1章 箱庭療法と外来森田療法との併用療法
 1 なぜ寺に「心理相談室」を開いたのか
  他力的体験としての自然治癒力
  「治す」ことから「任せる」ことへ
  アジールとしての寺を目指して
 2 相談室を訪れる人々について
 3 心理療法はどのように行われるか
  治療者、患者間で「間」を作ること
  自由で保護された場所
  自然治癒力の賦活 箱庭表現に中心化が明確になる
  外来森田療法の導入
  「執われ」をそのままにしておけるようになる
 4 他の心理療法との比較
  「対自的関係性」を重視する
 5 ネオ森田療法
  (1)箱庭療法とは何か?
   従来の箱庭療法と瞑想箱庭療法
   瞑想箱庭療法の効果とは
  (2)森田療法とは?
   森田神経質とは
  (3)なぜ、二つの療法が併用されなければならないのですか?
   複雑・多様化してきた精神症状 森田神経質非定型群の増加
   自覚から日常生活へ
   二つの心理療法のコンビネーションの流れ

第2章 精神科診断について
 1 精神科診断について
   原因を分類する従来の診断について
   現れている症状だけで診断するDSM-Ⅳ-TRの診断
 2 森田正馬の診断法
   森田神経質診断基準
   DSMをはじめとする精神科診断基準の曖昧性

第3章 森田神経質とその他の事例

森田神経質の事例

1 A子さんの事例 うつ病性障害(大うつ病)、自己愛性パーソナリティ障害
 「私は生まれて初めて「自分自身の人生」を発見しました。」
  1 A子さんの見立てについて
    A子さんとバブルの期の終焉
    A子さんに対する心理士の見立てについて
    大うつ病性エピソード
    自己愛性パーソナリティ障害
    A子さんの人生模様
  2 第一期 箱庭療法(前期・・・一三回/四か月)
    A子さんが面接の「場」に融合する
    最初の中心化
  3 第一期 箱庭療法(後期・・・二七回/一年)
    うつ状態の悪化を通して世界観を転換していく体験
    「死のトンネル」を抜けたA子さん
    心理療法における「他力仏教」と類似の体験
  4 第二期 外来森田療法(前期・・・二〇回/一〇か月)
    日記の書き方
    「自信のなさ」や「不安感」をそのままにしておく
    「かくあるべし」(思想の矛盾)から自由になる
  5 第二期 外来森田療法(後期・・・一〇回/八か月)
    「純な心」の言葉と同時にやってくる「未来」
    流れていく時間を体験するA子さん

2 B男さんの事例 新型うつ
 「ほんとうは、これでよかったのです」
  1 B男さんの見立て
    新型うつと森田神経質との関係
    B男さんの挫折
  2 第一期 箱庭療法(前期・・・全一五回/八か月)
    B男さんのよそよそしさ
    「場」にようやく融合できたB男さん
  3 第二期 外来森田療法(前期・・・一〇回/五か月)
    仕事に集中できない自分を受け入れる
    「気分本位」から「事実本位」へ、そして五感が開かれること
    たとえ症状が消えてもなくなることのない「我執」の問題

3 C男さんの事例 脅迫性パーソナリティ障害
 「仕事に意味を求めすぎてしまいました」
  1 C男さんの見立て
    脅迫性パーソナリティ障害とは?
    人生の後半を迎え会社の仕事に行き詰まったC男さん
  2 第一期 箱庭療法(前期・・・一二回/六か月)
    箱庭療法に抵抗を示すC男さん
    箱庭でのフュージョン体験
    諦念の中からの出発
  3 第二期 外来森田療法(後期・・・一〇回/四か月)
    「何々をしたから必ず~なる」(因果論)が疑わしくなりました
    「ねばならない」は身体感覚を変えることで変化する

4 D子先生の事例 大うつ病、脅迫性パーソナリティ障害
 「人生にはもう一つの意味があるようです」
    ベテラン教師の傷つき
  1 第一期 箱庭療法(一〇回/五か月)
    少女のような箱庭作品
    相反する感情を抱えての復帰
  2 第二期 外来森田療法(一二回/六か月)
    症状の再発
    恐怖に突入することで見えてきた「今を生きる子どもたち」の姿
    陽炎のように流れる時間の体験

5 E男さんの事例 気分変調性障害、回避性パーソナリティ障害
 「自宅の外は会社だけの世界ではありませんでした」
  1 E男さんの見立て
    「引きこもり」と「回避性パーソナリティ障害」の関係
  2 第一期 箱庭療法(前期・・・一五回/八か月)
    面接室への融合と治療者と家族との協力を図った期間
    「髭くらい剃ってきてくださいよ」
    母親に来所をお願いする 母親との悪循環(「精神交互作用」)の指摘
  3 第一期 箱庭療法(後期・・・二五回/五か月)
    農作業を始める
  4 第二期 外来森田療法(前期・・・七回/四か月)
    アルバイトを始める
    「対人関係に注意を向けるより、与えられた仕事に関心を向けてください」
  5 第二期 外来森田療法(後期・・・八回/四か月)
    「こころの外の世界」にはアジサイの花が咲いていた

森田神経質とは異なる重症例の事例

6 F子さんの事例 境界性パーソナリティ障害
 「暴れることに飽きました」
    「森田神経質」とは異なる重症例の事例
  1 F子さんの見立て
    境界性パーソナリティ障害とは
    怒りを抑えられないF子さん
    「愛」に飢えるという人生
  2 第一期 箱庭療法(前期・・・八回/四か月)
  3 第一期 箱庭療法(後期・・・二二回/七か月)
    相反する気持ちに直面する
    「愛を乞うこと」を少しずつ断念していくこと
  4 第二期 外来森田療法(前期一二回/六か月)
    対人関係にまつわる感情よりも身体感覚を大切に!
  5 第二期 外来森田療法(後期・・・一一回/六か月)
    否定的な感情を「そのまま」にしておくこと

7 G子さんの事例 解離性障害(多重人格)
 「こころの友達はもういらない」
  1 G子さんの見立て
    ヒステリーと解離性障害
  2 第一期 箱庭療法(前期・・・一一回/六か月)
    箱庭に表現された「もうひとつの世界」
  3 第一期 箱庭療法(中期・・・九回/五か月)
    トラウマの想起
    「愛」と「憎しみ」との葛藤
  4 第一期 箱庭療法(後期・・・八回/四か月)
    さよなら「心の友達」
  5 第二期 外来森田療法(前期・・・八回/四か月)
    生活ルーティンを整えること
  6 第二期 外来森田療法(後期・・・一一回/六か月)
    健康な「生の欲望」を支持すること

結章 理論編
 はじめに
  1 森田療法とユング心理学との共通性としての「東洋的自己」について
  2 新しい「瞑想箱庭療法」について
   (1)従来の「瞑想箱庭療法」と新しい「瞑想箱庭療法」の違い
   (2)「瞑想箱庭療法」と「場(場所)」の思想
   (3)なぜ患者の自然治癒力が賦活化するのか
   (4)外来森田療法における工夫
    「感情」と「行動」との分離について
    ユングのタイプ論を応用する
 おわりに

付論:パーソナリティ障害を伴ううつ病性障害に対する精神療法の検討 箱庭療法施行後の外来森田療法追加施行の有効性



あとがき

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