中国仏教を「一心」という概念によって統合化を図り、その思想を『宗鏡録』100巻を著わした永明延寿の全体像を解明。中国仏教史に新たな息吹を伝える迫真の論考!
序論
第一章 人と著作
第一節 延寿の生涯
第二節 延寿の著作と思想
一 『宗鏡録』
二 『唯心訣』
三 『註心賦』
四 『万善同帰集』
五 『観心玄枢』
六 『受菩薩戒法』
七 著作に通底する一心の思想
第三節 結論
第二章 隋唐の仏教解釈論と延寿
第一節 隋唐の三宗 教判の展開
一 天台の「五時八教」
二 慈恩の「三時八宗」
三 賢首の「五教十宗」
第二節 中唐の宗密 教判の継承と拡張
一 教判の継承と展開
二 判釈対象の拡張
第三節 五代の延寿 教判の解体と新たな仏教観の提示
一 宗密の仏教解釈論の換骨奪胎
二 教判の回収
三 一切を映す宗鏡
四 延寿の論拠
第四節 結論
第三章 唐代禅の修証論と延寿
第一節 神会による「頓悟」の宣揚 修行による悟りからありのままの悟りへ
第二節 馬祖による「頓悟」の徹底 ありのままに悟りによる修行の棄却
第三節 宗密の「頓悟漸修」論 馬祖禅批判と修行の再評価
一 馬祖批判
二 修密の修証論
三 実践の体系
第四節 延寿の「頓悟頓修」論 悟りと修行の新たな接合
一 修密の修証論の換骨奪胎
二 修行の再定義
三 馬祖禅の再評価
四 修証論の体系化
五 宗鏡による仏教の一元化
第五節 結論
第四章 『宗鏡録』と宋代仏教
第一節 仏説にならぶ『宗鏡録』
一 再評価と開板
二 撮要本の作成
三 『宗鏡録』の入蔵
第二節 『宗鏡録』からの仏教解釈論の受容
一 禅僧による仏説の開板
二 法輪を転じる禅僧
三 仏説流通の意義
第三節 『宗鏡録』からの修証論の受容
一 圜悟克勤の修証論 漸修と頓修
第四節 『宗鏡録』と宋代禅宗
一 「即心是仏」による禅宗の思想的統一
二 『四分律』と『梵網経』による受戒の規範化
三 仏教聖典要文集の編纂
第五節 結論
第五章 後代における延寿像
第一節 蓮宗祖師としての延寿と「禅浄一致」
一 宋・・・蓮宗祖師像の形成
二 元・・・方便として禅と浄土を併せ説く延寿
三 明清・・・「禅浄一致」者としての延寿
第二節 仏教再編者としての延寿と「教禅一致」
一 宋・・・心宗による三宗の調停者
二 元・・・教と禅の調停者
三 明・・・「教禅一致」を含む仏教全体の再編者
四 清・・・震旦第一の導師
第三節 結論
結論
附録 『永明智覚禅師方丈実録』翻刻テキストと訳注
参考文献
初出一覧
あとがき
索引