近世・近代の俗聖と地域社会

著者 菅根 幸裕
出版社 慶友社
ジャンル 日本仏教 > 浄土宗系
出版年月日 2024/10/14
ISBN 9784874490785
判型・ページ数 A5・300ページ
定価 本体8,000円+税
在庫 在庫あり
本書は、近世から近代における定住する俗聖の実態を明らかにしたものである。具体的には、空也堂配下の鉢屋・茶筅、時宗の末端にいた鉦打を分析した。これまで、俗聖について論究したものは、柳田国男・堀一郎をはじめとして多くあるが、いずれも為政者側の史料や地誌をもとにしたものであり、俗聖そのものの史料を扱ったものは少なかった。俗聖側からの視点というのは、本書が初めて試みたといっても過言ではない。鉢屋・茶筅については、本山であった空也堂の史料と茶筅側の史料を突き合わせて考察した。茶筅たちはそれぞれ定着した地域で葬祭等の一角を担い、またさまざまな生業を営みながら生き抜いてきた。俗聖の最大の問題は身分の向上であったが、束縛された定住生活のなかでどのように展開し身分の向上を図ったかを明らかにした。その結果,鉢屋・茶筅がその由緒を行基・明遍にもとめ、最終的にたどり着いたのが空也であった。日本宗教史の視角から示した近世社会で、身分外ととらえられていた俗聖に本末関係が成立していたことである。京都において鉢叩きを空也由緒のもとに統括していた空也堂が、こうした俗聖を配下に置くことで寺院経営を安定化させようとしたもので、空也堂は幕末期には六斎念仏講に由緒を示す鑑札等を下賜すると同時に上納金を受け取り、浄土真宗系秘事法門、在家念仏集団を包摂し、本末関係を継続していった。こうした本末関係は、空也が醍醐天皇の皇子であったという中世以来の由緒であり、そのハイライトが天皇の崩御に末流の俗聖が空也堂主催の焼香式への参列であった。焼香式は明治天皇、貞明皇太后、大正天皇、昭憲皇太后、英照皇太后へと継続していく。また時宗配下の鉦打を取り上げ「盆道具」を販売する農民を配下の売継とし、大山御師からも収入を得ていたことを示した。宗教者が配札行う際の窓口的側面を持った。問題は村落が鉦打を大切に取り扱っていることであり、鉦打が遊行上人に供奉修行をすることにより免状を受け、断絶しそうなときは農民から沙弥を仕立て時宗寺院に付属するというものであった。以上を通じて本書は、史実を正しく認識し、差別などの低い扱いすべての問題に対する理解を深め、解消することを念願している。
目   次
  凡   例
序 章 本書の課題と方法
 第一節 本研究の問題意識と対象  13
 第二節 近世宗教史研究と聖の位置  16
(1)近世宗教史研究の流れ  16
(2)身分集団論・身分的周縁論の形成と展開  25
(3)聖と民間伝承  27
第一章 空也堂と空也聖
 はじめに  33
 第一節 空也堂と極楽院空也堂  33
 第二節 近世地誌類にみる空也堂と空也聖  36
 第三節 『祠曹雑識』にみる空也聖の諸様相  41
 おわりに  51
第二章 空也聖「茶筅」と身分向上
──備中国A家史料を中心に──
はじめに  56
第一節 A家史料  57
第二節 茶筅・隠坊(三昧聖)の由来書  57
第三節 宝永四年の『無常三昧聖伝記』  61
第四節 行基系隠坊(三昧聖)としてのA家  65
第五節 空也堂配下茶筅としてのA家  70
おわりに  77
第三章 空也聖「鉢屋」と地域信仰
──伯耆国転法輪寺と鉢屋の争論から──
 はじめに  82
第一節 「尼子経久乗取富田城并鉢屋千万歳の事」にみる鉢屋  83
第二節 「経久の事」の示すもの  85
第三節 河原巻物としての「本朝鉢屋之来由并雲州苫由緒之事」  87
第四節  近世中期の伯耆国における鉢屋  89
(1)刑吏としての鉢屋とその社会的地位  90
(2)鉢屋の生業  91
 第五節 転法輪寺の空也伝承と空也信仰の展開  92
(1)転法輪寺と空也伝承  93
(2)『空也上人御事蹟絵巻』について  95
(3)空也上人立像について  97  
 第六節 空也信仰の形成と鉢屋  103
(1)「上人橋」の伝承  103
(2)空也上人と古布庄谷  104
(3)鉢屋の身分と空也伝承  107
 第七節 京都空也堂と鉢屋  108
 おわりに  110
第四章 空也聖「鉢」の身分の向上
──丹後国江尻村・国分村の史料から──
はじめに  116
第一節 丹後国末流と空也堂  116
第二節 国分村片山鉢一件  118
第三節 空也堂への口添依頼  123
おわりに  128
第五章 近世関東における空也聖(鉢叩)の形成と展開
──常陸国宍倉空也堂と鉢叩──
はじめに  130
第一節 宍倉村と近世地誌にみる宍倉空也堂  130
第二節 空也入滅の記録をめぐって  133
第三節 近世中期の空也堂──了海の空也堂復興活動──  134
第四節 空也堂と筑波町末流  142
第五節 幕末・明治初期の空也堂──別当浄栄の再建活動──  149
第六節 空也堂縁起の示すもの──延喜帝五唐堂流──  157
おわりに  162
第六章 空也堂の近世・近代における変容について
──空也堂と六斎念仏講を中心に──
はじめに  167 
第一節 三巻の法皇・天皇焼香絵巻と焼香記録  167
(1)光格法皇焼香絵巻と焼香記録  167
(2)仁孝天皇焼香絵巻と焼香記録  174
(3)孝明天皇焼香絵巻と焼香記録  180
第二節 近代の焼香式  189
第三節 近代における空也堂と六斎念仏講  198
第四節 菊紋をめぐる一考察  204
おわりに  208
第七章 近代社会と空也聖
──利用された「空也」──
はじめに  212
第一節 空也堂の再建と幕末維新期の末流の再構成  213
(1)近世における空也堂と末流  213
(2)明治維新と末流の取締り  217
(3)空也堂の既成宗教帰入  220
第二節 六十六部廻国聖と空也堂  223
第三節 「裏」を自認する在家念仏集団  227
(1)秘事法門とは  227
(2)空也堂と秘事法門の本末の現況  229
(3)空也堂と秘事法門の本末の歴史  232
(4)関東空也衆  238
 おわりに  242

第八章 近世時宗配下鉦打(沙弥)に関する一考察
──下総国野尻村の事例を中心に──
はじめに  246
第一節 『祠曹雑識』にみる沙弥  247
第二節 下総国利根川流域における沙弥  250
(1)野尻河岸の沙弥文書  250
(2)時宗称名寺と沙弥  251
(3)村方文書に表れた沙弥春光  252
(4)沙弥と売継  254
(5)沙弥の商品  259
(6)村落の中での沙弥の立場  261
(7)時宗教団の中での沙弥  265
 おわりに  267
第九章 関東近世村落における雑業(キヨメ)の構造
──時宗配下鉦打を事例として──
はじめに  270
第一節 三昧聖としての鉦打  270
第二節 中世における「飛脚役」としての鉦打──藤田(北条)氏邦朱印状から──  273
第三節 近世史料にみる鉦打の雑業  275
(1)下野国都賀郡平井村の山守・掃除役としての鉦打  275
(2)上総国新井田村時宗称名寺配下鉦打と掃除役  278
(3)下野国鹿沼宿の市神祭祀役としての鉦打  280
第四節 近世史料にみる鉦打の身分と立場  281
おわりに  283
終 章 まとめと課題
初出一覧
あとがき
索  引

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