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華厳教学成立論
東アジアの思想文化に多大な影響を与えてきた華厳教学の成立過程を、智儼から法蔵に至る思想の分析を通じて解明する、待望の研究書。
著者 | 織田 顕祐 著 |
---|---|
出版社 | 法藏館 |
ジャンル | 経典・聖典(学術的) |
出版年月日 | 2017/02/25 |
ISBN | 9784831873941 |
判型・ページ数 | A5・588ページ |
定価 | 本体12,000円+税 |
在庫 | 在庫あり |
華厳教学成立の本質を解明する、待望の研究書。
7、8世紀に中国で成立した華厳教学は、中国をはじめ、朝鮮半島、日本などに広く伝わり、東アジアの思想文化に多大な影響を与えてきた。
しかし、『華厳経』の研究は唐代以前から、とくに地論学派によって既に行われてきた。
それでは、華厳教学とは、それまでの『華厳経』研究とどのように異なり、何を明らかにしたのか。そもそも華厳教学とは何をもって独立した一派と捉えられるのか。
これまで自明のことのように扱われてきたこれらの諸問題を明らかにするのが本書の課題である。
このような問題を考える手法として本書では、智儼(ちごん、602~668)の思想が当時の仏教思想のなかで、どのような位置にあるのかを分析する。
一般的に、華厳教学は唐中期の賢首大師法蔵(けんじゅだいし・ほうぞう、643~712)に至って大成されたといわれている。しかし、法蔵自身は師であった智儼が、その主著である『華厳経捜玄記』を著わしたことをもって華厳教学が創始されたと捉えている。法蔵はまた『華厳経捜玄記』の内容を「別教一乗無尽縁起」と要約した。
こうしたことから本書では、法蔵によって表現された智嚴の思想を、便宜的に「別教一乗」と「無尽縁起」に分け、これら二つの面を前代の仏教思想との関係を考慮しつつ詳細に論じることで、上記の課題を明らかにする。また、そのために必然的に関わってくる仏教思想の諸概念や論書に対しても多角的に考究し、新知見を提示する。
7、8世紀に中国で成立した華厳教学は、中国をはじめ、朝鮮半島、日本などに広く伝わり、東アジアの思想文化に多大な影響を与えてきた。
しかし、『華厳経』の研究は唐代以前から、とくに地論学派によって既に行われてきた。
それでは、華厳教学とは、それまでの『華厳経』研究とどのように異なり、何を明らかにしたのか。そもそも華厳教学とは何をもって独立した一派と捉えられるのか。
これまで自明のことのように扱われてきたこれらの諸問題を明らかにするのが本書の課題である。
このような問題を考える手法として本書では、智儼(ちごん、602~668)の思想が当時の仏教思想のなかで、どのような位置にあるのかを分析する。
一般的に、華厳教学は唐中期の賢首大師法蔵(けんじゅだいし・ほうぞう、643~712)に至って大成されたといわれている。しかし、法蔵自身は師であった智儼が、その主著である『華厳経捜玄記』を著わしたことをもって華厳教学が創始されたと捉えている。法蔵はまた『華厳経捜玄記』の内容を「別教一乗無尽縁起」と要約した。
こうしたことから本書では、法蔵によって表現された智嚴の思想を、便宜的に「別教一乗」と「無尽縁起」に分け、これら二つの面を前代の仏教思想との関係を考慮しつつ詳細に論じることで、上記の課題を明らかにする。また、そのために必然的に関わってくる仏教思想の諸概念や論書に対しても多角的に考究し、新知見を提示する。
序 文 (鍵主良敬)
序 章 本書の問題意識
第一章 華厳一乗思想の背景
第一節 地論宗教判史より見た智儼の教学
一 はじめに
二 地論宗の成立に関する諸問題
Ⅰ 通説としての地論宗観
Ⅱ 通説に関する矛盾点
Ⅲ 通説の形成について
Ⅳ 地論宗成立に関する新たな視点──アとイをどう考えるか
三 地論教学における教判思想
Ⅰ 菩提流支における教判思想
Ⅱ 慧光の教判思想
Ⅲ 教判より見た菩提流支と慧光の思想的対立
Ⅳ 後期地論学派における教判思想
第二節 智儼における一乗の課題
一 教判史上における『摂大乗論』北地伝播の意義と課題
二 『捜玄記』玄談と地論・摂論教学の関係
三 補 説
第二章 華厳一乗思想の成立
第一節 智儼における華厳同別二教判の形成
一 はじめに
二 『捜玄記』の所説
三 一乗教の共不共という視点
第二節 華厳同別二教判の本質的意味──『捜玄記』に華厳同別二教判は存在するか──
一 問題の所在
二 漸頓円三教判の背景
三 『捜玄記』三教判の円教段の理解
四 『捜玄記』の円教理解の背景
第三章 華厳法界縁起の背景
第一節 中国仏教における「縁起」思想の理解──「縁起」と「縁集」をめぐって──
一 問題の所在
二 『了本生死経』異訳各種における「縁起」の訳例
三 鳩摩羅什は「縁起」という訳語を用いない
四 菩提流支訳『十地経論』の「因縁集」と「十二因縁」
五 浄影寺慧遠の縁起観
小 結
第二節 アーラヤ識思想と如来蔵思想の基本的相違
一 『般若経』の如
二 「悉く仏性有り」の意味
三 「如来蔵有り」とはどういうことか
四 「唯だ識のみ有り」について
小 結
第三節 如来蔵思想における求那跋陀羅訳と菩提流支訳の相違
一 問題の所在
二 菩提流支訳経論に説かれる如来蔵の概念
小 結
第四章 『大乗起信論』をめぐる問題
第一節 縁起思想の展開から見た『起信論』の縁起説
一 分別の問題
二 『起信論』所説の「縁起」の構造
三 『起信論』における共時的論理関係を表わす所説
四 『起信論』における通時的相続関係を表わす所説
小 結
第二節 『起信論』中国撰述説否定論
一 はじめに
二 『法経録』の「衆論疑惑」の記述をめぐって
三 『起信論』に説かれる如来蔵と阿梨耶識の関係
第三節 智儼・元暁における『起信論』の受容
一 はじめに
二 智儼における『起信論』の受容
三 元暁における『起信論』の受容──一心を手がかりとして──
小 結
第五章 地論学派の「縁起」思想
第一節 浄影寺慧遠における「依持」と「縁起」の問題
一 慧遠における「依持」と「縁起」の用例
二 『勝鬘経』と『楞伽経』の如来蔵説
三 『楞伽経』と『起信論』の質的相違
小 結
第二節 地論学派の法界縁起思想
一 縁集説のよりどころとしての『十地経論』の所説
二 地論学派の縁集説と慧遠・霊裕の「法界縁起」
三 懍師の四種縁集説と「法界縁起」
小 結──智儼の法界縁起説への展望──
第六章 智儼の法界縁起思想
第一節 『十地経論』の六相説と智儼の縁起思想──地論から華厳へ──
一 『十地経』『十地経論』の六相説とはどのような思想か
二 六相説に関する法上・慧遠の見解
三 智儼における六相説の受容
四 華厳縁起論の本質──智儼と法蔵──
小 結
第二節 『捜玄記』の法界縁起思想
一 『捜玄記』の言う法界縁起とはどのようなことか
二 法界縁起説はなぜ第六地で説かれるのか
三 法界縁起に「衆多有り」とはどういうことか
小 結
第三節 智儼の阿梨耶識観
一 『捜玄記』の心識説
二 『五十要問答』『孔目章』の心識説
小 結
第七章 法蔵における法界縁起思想の形成過程
第一節 法蔵の『密厳経疏』について
一 『大乗密厳経』の所説に関して
二 法蔵撰『大乗密厳経疏』の思想的な特徴
三 法蔵の「心」理解と『密厳経』
小 結
第二節 復礼の『真妄頌』から透視されること
一 『真妄頌』は何を問うているのか
二 法蔵の「如来蔵縁起」とはどういうことか
三 『大乗密厳経』について
四 法蔵の如来蔵随縁説と『起信論』
小 結
第三節 如来蔵随縁思想の深化
一 問題の所在
二 『起信論義記』以前の思想史的な背景
三 法蔵における『起信論義記』撰述の思想的な課題
小 結
結 章 法界縁起思想の確立──杜順・智儼から法蔵へ──
第一節 「理」と「事」の法界縁起
第二節 華厳教学における「事」の概念
第三節 華厳教学における「理」の概念
第四節 法蔵の「理事無礙」の法界縁起について
参照文献
初出一覧
あとがき
韓国語概要
中国語概要
英語概要
索 引
序 章 本書の問題意識
第一章 華厳一乗思想の背景
第一節 地論宗教判史より見た智儼の教学
一 はじめに
二 地論宗の成立に関する諸問題
Ⅰ 通説としての地論宗観
Ⅱ 通説に関する矛盾点
Ⅲ 通説の形成について
Ⅳ 地論宗成立に関する新たな視点──アとイをどう考えるか
三 地論教学における教判思想
Ⅰ 菩提流支における教判思想
Ⅱ 慧光の教判思想
Ⅲ 教判より見た菩提流支と慧光の思想的対立
Ⅳ 後期地論学派における教判思想
第二節 智儼における一乗の課題
一 教判史上における『摂大乗論』北地伝播の意義と課題
二 『捜玄記』玄談と地論・摂論教学の関係
三 補 説
第二章 華厳一乗思想の成立
第一節 智儼における華厳同別二教判の形成
一 はじめに
二 『捜玄記』の所説
三 一乗教の共不共という視点
第二節 華厳同別二教判の本質的意味──『捜玄記』に華厳同別二教判は存在するか──
一 問題の所在
二 漸頓円三教判の背景
三 『捜玄記』三教判の円教段の理解
四 『捜玄記』の円教理解の背景
第三章 華厳法界縁起の背景
第一節 中国仏教における「縁起」思想の理解──「縁起」と「縁集」をめぐって──
一 問題の所在
二 『了本生死経』異訳各種における「縁起」の訳例
三 鳩摩羅什は「縁起」という訳語を用いない
四 菩提流支訳『十地経論』の「因縁集」と「十二因縁」
五 浄影寺慧遠の縁起観
小 結
第二節 アーラヤ識思想と如来蔵思想の基本的相違
一 『般若経』の如
二 「悉く仏性有り」の意味
三 「如来蔵有り」とはどういうことか
四 「唯だ識のみ有り」について
小 結
第三節 如来蔵思想における求那跋陀羅訳と菩提流支訳の相違
一 問題の所在
二 菩提流支訳経論に説かれる如来蔵の概念
小 結
第四章 『大乗起信論』をめぐる問題
第一節 縁起思想の展開から見た『起信論』の縁起説
一 分別の問題
二 『起信論』所説の「縁起」の構造
三 『起信論』における共時的論理関係を表わす所説
四 『起信論』における通時的相続関係を表わす所説
小 結
第二節 『起信論』中国撰述説否定論
一 はじめに
二 『法経録』の「衆論疑惑」の記述をめぐって
三 『起信論』に説かれる如来蔵と阿梨耶識の関係
第三節 智儼・元暁における『起信論』の受容
一 はじめに
二 智儼における『起信論』の受容
三 元暁における『起信論』の受容──一心を手がかりとして──
小 結
第五章 地論学派の「縁起」思想
第一節 浄影寺慧遠における「依持」と「縁起」の問題
一 慧遠における「依持」と「縁起」の用例
二 『勝鬘経』と『楞伽経』の如来蔵説
三 『楞伽経』と『起信論』の質的相違
小 結
第二節 地論学派の法界縁起思想
一 縁集説のよりどころとしての『十地経論』の所説
二 地論学派の縁集説と慧遠・霊裕の「法界縁起」
三 懍師の四種縁集説と「法界縁起」
小 結──智儼の法界縁起説への展望──
第六章 智儼の法界縁起思想
第一節 『十地経論』の六相説と智儼の縁起思想──地論から華厳へ──
一 『十地経』『十地経論』の六相説とはどのような思想か
二 六相説に関する法上・慧遠の見解
三 智儼における六相説の受容
四 華厳縁起論の本質──智儼と法蔵──
小 結
第二節 『捜玄記』の法界縁起思想
一 『捜玄記』の言う法界縁起とはどのようなことか
二 法界縁起説はなぜ第六地で説かれるのか
三 法界縁起に「衆多有り」とはどういうことか
小 結
第三節 智儼の阿梨耶識観
一 『捜玄記』の心識説
二 『五十要問答』『孔目章』の心識説
小 結
第七章 法蔵における法界縁起思想の形成過程
第一節 法蔵の『密厳経疏』について
一 『大乗密厳経』の所説に関して
二 法蔵撰『大乗密厳経疏』の思想的な特徴
三 法蔵の「心」理解と『密厳経』
小 結
第二節 復礼の『真妄頌』から透視されること
一 『真妄頌』は何を問うているのか
二 法蔵の「如来蔵縁起」とはどういうことか
三 『大乗密厳経』について
四 法蔵の如来蔵随縁説と『起信論』
小 結
第三節 如来蔵随縁思想の深化
一 問題の所在
二 『起信論義記』以前の思想史的な背景
三 法蔵における『起信論義記』撰述の思想的な課題
小 結
結 章 法界縁起思想の確立──杜順・智儼から法蔵へ──
第一節 「理」と「事」の法界縁起
第二節 華厳教学における「事」の概念
第三節 華厳教学における「理」の概念
第四節 法蔵の「理事無礙」の法界縁起について
参照文献
初出一覧
あとがき
韓国語概要
中国語概要
英語概要
索 引