続ヴェネツィアの石

ルネサンスとグロテスク精神

ゴシックからルネサンスへ、ヴェネツィアの建築はどう変化したのか。人と芸術の関わりについて、示唆に富んだルネサンス論を展開する

著者 ジョン・ラスキン
内藤 史朗 翻訳
出版社 法藏館
ジャンル 美術
出版年月日 2017/10/13
ISBN 9784831881793
判型・ページ数 4-6・305ページ
定価 本体3,200円+税
在庫 在庫あり
前巻『ヴェネツィアの石』においては、ビザンチン時代からゴシック時代の建築・装飾に焦点を絞って、それらの精神――心的傾向を辿り、ヴェネツィア衰退の運命を左右したのは何かを探ろうとした。本書は、それに続く巻として、ルネサンスを、「初期ルネサンス」「ローマ・ルネサンス」「グロテスク・ルネサンス」に分け、それぞれの特徴を説明する。とくに「グロテスク・ルネサンス」はラスキン独特の見方が強調されて興味深い。
ラスキンは、作品の創作にあたっては、手技と知性と心情が連動して動く時、傑作も生まれるという。更に言うなら、心情が三者の中で最高位になり、知性が次位で、手技が下位になると考え、その手技が、知性と心情を結びつけて働かせる。つまり、手技において、心情と知性を同時に働かせることによって、作者自身が統合され、作者が「全体的人間」になり、それが人間疎外の回復にもつながるというのだ。こういう考えは、ヨーロッパの従来の肉体を蔑視し、精神を上位に考える思想とは異なるものであったが、彼の思想は、ウィリアム・モリスやアール・ヌーヴォーなどの芸術運動に深い影響を与えた。

【訳者のあとがき】
ラスキンのルネサンス論は、ありきたりのルネサンス論ではない。それは芸術論を超えて宗教と人間のあり方を問い、また現代までの教育体制の根本を衝くものとなった。・・・レオナルドも、ミケラジェロも、ラファエロも、近代の科学をほとんど知らない時代の芸術家であった。(中略)新しい科学や古典の知識がいくら増えても、知識を発見し、驚きをもって接する心がその土台になければ、その知識は不毛だとラスキンは指摘する。
第三部 ルネサンス時代
凡例
一章初期ルネサンス

二章ローマ・ルネサンス
Ⅰ  「学問の誇り(驕り)」
Ⅱ  「地位の誇り(驕り)」
Ⅲ  「体系の誇り(驕り)」
Ⅳ  「不信心」

三章グロテスク・ルネサンス
Ⅰ  「賢明に戯れる人たち」
Ⅱ  「人間本性に立ち戻る必要から戯れる人たち」
Ⅲ  「無節制に過度に戯れる人たち」
Ⅳ  「全然戯れない人たち」
(A)冷淡な気分
(B)皮肉屋(風刺家を含む)の気分
(C)病的な想像力を自制できない気分

四章  結論

人名録(建築・彫刻・絵画・思想関係)
付録Ⅰ~Ⅶ
参考文献 
あとがき

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