新聞掲載広告(2024年9月~) - 2024.11.19
寂嚴和上漢詩集 松石餘稿 訳注
寂嚴和上は、江戸時代中期、倉敷宝嶋寺の住職だった学僧。悉曇の権威、西日本一の書法家といわれた。その和上が、自らの漢詩集『松石餘稿』を亡くなる直前まで推敲していたものの親筆が宝嶋寺に伝わる。これを宝嶋寺住職を始めとする寂嚴を敬慕する方たちが四十年近くかかって読んでこられた原稿に、中国文学の学徒である下定雅弘先生が本に仕上げる最後の作業に加わって出版されました。禅宗の僧の漢詩集はこれまでにも出ていますが、真言宗の僧の漢詩集は本書が初めてでしょう。その詩は計105首。漢詩といえば、古来、悲哀を詠じることが多いが、寂嚴の詩は、弟子の死を慟哭し、自分が死に臨む感懐を詠じる他は、ほとんどが喜びに満ちているのが大きな特徴。わかい頃から最晩年に至るまで、修行の中で思ったこと・体験したことを詠じるのを柱としながら、師匠への敬慕・弟子への愛情・住職としての使命感などを、真率平易な言葉で詠じ、ユーモアにもあふれている。二十歳代、連島円福寺の住職をしていた時、村が大洪水に見舞われ、その苦難を数年かけて乗りこえる寂嚴の奮闘には感動を覚えざるを得ない。詩中、仏教語がしばしば登場するので、「仏教語解説」を付載。巻末に『松石餘稿』の真筆の影印。
寒梅
丙午元旦
林鳳雅丈の東武へ之くを送る
林泉亭に題を探す、童子 氷を敲きて夜 茶を煮るの句を得たり
途中、故人に逢ふ
蛍
九日に菊無し。辛丑秋七月、洪水の為林園変じて沙磧と為る。
卒に五絶を題し、世間無常の想ひを?ぶ。
仲秋
大坂にて神龍と留別す
浪速に直指菴の和尚を訪ふ
人の雪に題するに和す ほか
丙午元旦
林鳳雅丈の東武へ之くを送る
林泉亭に題を探す、童子 氷を敲きて夜 茶を煮るの句を得たり
途中、故人に逢ふ
蛍
九日に菊無し。辛丑秋七月、洪水の為林園変じて沙磧と為る。
卒に五絶を題し、世間無常の想ひを?ぶ。
仲秋
大坂にて神龍と留別す
浪速に直指菴の和尚を訪ふ
人の雪に題するに和す ほか