ダライ・ラマ 共苦の思想

著者 辻村 優英
出版社 ぷねうま舎
ジャンル 各地域仏教 > インド・チベット
出版年月日 2016/03/23
ISBN 9784906791552
判型・ページ数 4-6・260ページ
定価 本体2,800円+税
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西欧近代の思想と、仏教の底深い伝統とが、強烈な個性の上で出会った。指導者として亡国の運命を担いつつ、世界に向けて非戦と平和をエネルギッシュに訴え続けるダライ・ラマ十四世の思想の源泉には、共苦(ニンジェ)という、徹底した平等と共生の土台があった。世界戦争前夜の暗雲が影を落とす「いま」、改めて立ち止まることを知らない実践的思想の成り立ちと背景に目を向けることで、もう一つの生き方のヒントを提示する。
はじめに 「共苦」と近代―ダライ・ラマ思想の源泉

第一章 ダライ・ラマ十四世とは誰か
 1 共苦の菩薩、観自在の伝説―チベット人の神話的起源
 2 生まれ変わりの論理―輪廻と化身
 3 化身制度の歴史的経緯
 4 歴代ダライ・ラマ
 5 ダライ・ラマ十四世
 6 ダライ・ラマの三つの身体(自然・政治・宗教)

第二章 共苦の宗教思想
 1 排他主義から宗教多元主義へ
 2 すべての人に必要なもの―宗教かスピリチュアリティか
 3 心の変革と宗教―チベット語のチュゥ
 4 非宗教としての普遍的宗教(Universal Religion)

第三章 共苦の政治思想
 1 「宗政和合」―チベット独自の政治体制と民主化
 2 普遍的人権とアジア的人権
 3 宗教と世俗主義をつなぐ非暴力
 4 共苦による暴力は認められるか?―積極的非暴力と消極的非暴力

第四章 共苦の科学思想
 1 科学との出会い―月にウサギはいるか? 
 2 健全な懐疑主義と認識手段
 3 仏典の信頼性と瞑想における知覚
 4 心の分析と共苦

第五章 共苦の環境思想(自然・社会)
 1 植物に心を認めるか?―心によって環境を区別する
 2 チベットの環境法と非暴力
 3 孤独を生む社会環境―悪魔の碾く臼と人間の物化
 4 市場への信頼と、市場に欠けているもの

第六章 共苦の贈与論
 1 共苦の基盤としての自我
 2 苦しみのかけがえなさ―二つの私秘性と苦しみの価値
 3 苦しむことの耐え難さ
 4 空と共苦のコペルニクス的転回
 5 苦しみという名の贈りもの

第七章 共苦の応答
 1 Univeral Responsibility (普遍的責任)という言葉
 2 苦しみにおける普遍―Universal
 3 勇ましき心―Responsibility
 4 理想としての大悲と、概念的「世俗」化
 5 苦しみへの遍き応答

終章 理想と現実のはざまで―欲望・自由、そして共苦
 1 欲望と自由の牢獄
 2 共苦―個人化によるジレンマの解消へ向けて
 3 理想と現実のはざまで


謝辞
あとがき

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