カトリック信徒の移動とコミュニティの形成

潜伏キリシタンの二百年

著者 叶堂 隆三
出版社 九州大学出版会
ジャンル 哲学・思想 > 仏教哲学・思想
出版年月日 2018/09/30
ISBN 9784798502441
判型・ページ数 A5・441ページ
定価 本体8,000円+税
在庫 品切れ・重版未定
2018年7月、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」がUNESCOの世界遺産に登録された。その登録運動もあり、江戸時代において、現在の長崎市外海(そとめ)地区から五島に移住があったことは広く知られている。実際には外海からは五島に限らず黒島や平戸島、北松浦半島の九十九島の半島、長崎港沖の島嶼にも移住が生じ、これらの地からさらなる移住が生じた結果、長崎県内に多くのカトリック信徒の集住地が形成されることとなった。こうした信徒の移住は長崎県外にも展開され、福岡県や宮崎県に長崎の信徒の「飛び地」が存在している。

本書は、江戸後期から明治期になぜ長崎の信徒の移住が頻繁に生じたのかを国内外の移動や移民研究の観点を用いて解き明かし、いわゆるキリシタン・ロマンの霧に隠れている、信仰と生業を基盤とする信徒の暮らしと移住の背景を明らかにするものである。信徒の移住の中には、明治期には外国人神父の宣教戦略が、大正・昭和期以後には国の開拓政策や地域政策が、それぞれ関与したものも含まれている。今日、歴史のひだに埋もれつつあるこうした事実を、残存する諸資料と現地での聞き取り調査等を通して明らかにしていく。

長崎の潜伏キリシタンとその子孫の「旅」の足跡を辿り、信徒が山間や海辺の移住地に集落を形成し、教会を設立してきた数世代に及ぶ生活を社会学の視点から解明する。
第1章 長崎のカトリック信徒の移動
 第1節 長崎の信徒の移動
 第2節 開拓移住の背景
 第3節 移動の特徴
 第4節 移住地の多様性
 第5節 移住の時期区分

第2章 西彼杵半島と第1次移住地
 第1節 長崎市外海
 第2節 新上五島町
 第3節 佐世保市黒島

第3章 長崎市の半島と長崎港外の島嶼
 第1節 長崎市の地域状況
 第2節 小榊
 第3節 小ケ倉大山町・深堀善長谷
 第4節 伊王島町(馬込・大明寺)

第4章 平戸島への移住と居住地の展開
 第1節 平戸島中南部
 第2節 平戸島大久保半島・古江半島

第5章 北松浦半島への移住と居住の展開
 第1節 佐世保市矢岳神崎
 第2節 佐世保市長串褥崎

第6章 教役者主導の開拓移住とその展開
 第1節 平戸市田平地区田平
 第2節 平戸市田平地区と松浦市の開拓地
 第3節 大村市竹松
 第4節 平戸市紐差地区木ケ津(坊主畑)
 第5節 福岡県行橋市新田原

第7章 都市(近郊)への農業移住と炭鉱における家族形成
 第1節 佐世保市の都市と産業の展開
 第2節 佐世保市への信徒の移住と居住の展開
 第3節 平戸市平戸
 第4節 諫早市
 第5節 佐世保市北松地区

第8章 第二次世界大戦前の国の政策と開拓移住
 第1節 開拓政策
 第2節 宮崎市田野法光坊集落
 第3節 福岡市西区能古島(大泊)

第9章 第二次世界大戦後の農業政策・地域政策と移住・集落移転
 第1節 佐世保市・平戸市・大村市
 第2節 福岡市城南区茶山
 第3節 上五島町青方

第10章 結論
 第1節 信徒の農村間移動に関する基本的視点
 第2節 信徒の移動の社会的特徴
 第3節 日本の近代化と長崎の信徒の開拓移住

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