超越と実存

「無常」をめぐる仏教史

著者 南 直哉
出版社 新潮社
ジャンル 哲学・思想 > 仏教哲学・思想
出版年月日 2018/01/25
ISBN 9784103021322
判型・ページ数 4-6・250ページ
定価 本体1,800円+税
在庫 品切れ・重版未定
「諸行無常(=すべての“実存”は無常である)」。そうブッダが説き始まった仏教は、インドから中国、そして日本へと伝わる過程で、「仏性」「唯識」「浄土」などの「超越的理念」と結びつき、大きく変化していった。「恐山の禅僧」が、ブッダから道元までの思想的変遷を「超越と実存の関係」から読み解く、かつてない仏教史の哲学。
プロローグ――私の問題

序章 問いの在りか

死と自己/「無常」という実存/超越、または根拠への欲望/ブッダの思想はいかに変化したのか/最大の問題は「言語」である/実存の無常と超越への希求/「現代」への問い

第一部 インド――無常の実存、超越の浸透

第一章 ゴータマ・ブッダ

決定的わからなさ/青年シッダッタの問題意識/二つの禅定の否定/苦行の否定/「無常」と「無我」の教え/「無明」の発見/「無明」の解毒としての「無記」/ブッダの「悟り」/実践の意味

第二章 アビダルマ、般若経典、華厳経典の思想

要素分割主義のはじまり/アビダルマの思想/般若経典の「空」/妄想からの離脱と実践、「空」の「実体」化/大乗仏典のブッダ/全体論的世界観へ/唯心の思想

第三章 法華経、浄土経典、密教経典の思想

「絶対」の主張/「普遍性」の保証としての「授記」/「永遠性」と見せかけの「死」/「法師」と「常不軽菩薩」/救済思想の導入/救済を可能にする「誓願(本願)」/「救済」の普遍性と念仏/超越の実存化、あるいは超越としての実存/「一致」の実践と言語

第四章 竜樹と無着・世親の思想

無記と空の論理/言語と形而上学の解体/言語という無明と実存の構造/認識の形而上学/核心としての言語/言語としてのアーラヤ識/言語と意識の解体

第ニ部 中国――超越論思想としての中国仏教

第五章 中国仏教、智顗と法蔵の思想

「天」の形而上学/「道」の形而上学/「格義」の仏教――初期の中国的受容/天台智顗の思想/「実体」の論理とその前提/「円融」の存在論/唯識思想の導入による「空」理解/「法界縁起」の理論化

第六章 中国浄土教と禅の思想

救済思想の構築/「濁世」と「衆生」/実体化への躊躇/「絶対」の救済/中国禅における断絶/中国禅の「心」主義と「見性」/「不立文字 教外別伝 直指人心見性成弘」/「清規」と「公案」

第三部 日本――「ありのまま」から「観無常」へ

第七章 空海以前と空海の思想

仏教以前の思想/形而上学の無用/仏教の伝来/「聖徳太子」の意義/最澄の登場/大乗戒の導入/空海の密教思想/独自の言語論/言語と存在の一致/超越の溶解

第八章 天台本覚思想と法然の革命

「ありのまま」の肯定/「天台本覚思想」の形成/初期の本覚思想/「ありのまま」主義の昂進/「ありのまま」の形而上学/浄土教の広まりと末法思想/法然の思想的革命/「一神教」的パラダイム/「日本」との断絶/浄土教の革命

第九章 親鸞と道元の挑戦

「ありのまま」主義の超克/法然と親鸞、その非連続/照らし出される「悪人」/『歎異抄』の言葉/「信」への問いと『教行信証』/『教行信証』の核心/仏教の突破/「観無常」の思想/「身心脱落」の修行/「非思量」の坐禅/行為としての実存/縁起する実存/修行する実存の編成/我らが時代の「仏教」

エピローグ――私の無常

おわりに

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