唐代浄土教史の研究

日本の仏教に多大な影響を与えた唐代浄土教。従来の研究で捨象されてきた問題点を再検証し、通説を見直す意欲的な論考十二篇を収める

著者 成瀬 隆純
出版社 法藏館
ジャンル 各地域仏教 > 中国・朝鮮
出版年月日 2018/05/21
ISBN 9784831863737
判型・ページ数 A5・300ページ
定価 本体6,500円+税
在庫 在庫あり
隋から唐代にかけて発展した浄土教は、日本に伝わり、法然や親鸞などの日本の浄土教の形成に多大な影響を及ぼしたことはよく知られている。

唐代浄土教の研究は中国仏教研究の重要なテーマの一つとして、これまでに多くの研究が蓄積されてきた。

本書は、従来の研究において見過ごされてきた唐代浄土教史の問題点を再検証し、通説を見直すことで、教科書的に語られてきた浄土教史にはみられない唐代浄土教の姿を描き出す。

なかでも『浄土論』の著者迦才の正体に迫った一連の論考は瞠目される。
当時の浄土教理解を示す作品として取り上げられることの多い迦才の『浄土論』であるが、著者迦才については詳しい事跡が伝わっておらず、謎の人物とされてきた。
本書はその迦才が何者であるかを明らかにしてその経歴を突き止め、またそのことによって、これまで判然しなかった疑問点を解明している。たとえば、これまで「偶然の出遇い」ように語られてきた道綽と善導の邂逅について、その間に迦才の介在があった可能性が高いことを指摘する。

いわば宗門的関心によって研究が深化してきたが、一方でその関心のゆえに日本や宗派との関係で研究が完結し、いきおい捨象されてきた問題点も多く残されている。

本書はそうした看過されてきた問題にスポットを当てて研究の間隙を埋め、唐代浄土教史の横への広がりを示すとともに、そこに浮かび上がった唐代浄土教史のうえに、従来の宗門的関心から取り上げられた問題を置き直して再検討し、もって新たな知見を提示する。


第一章 蒲州栖巌寺の浄土教
一、はじめに
二、栖巌寺の由来
三、栖巌寺智通・真慧の浄土信仰
四、栖巌寺道傑・神素の浄土信仰
五、結 語
第二章 中国浄土教と自撲懺悔
一、はじめに
二、自撲懺法
三、中国浄土教と自撲懺悔
四、浄土教徒の自撲法の特殊性
五、自撲懺法の禁止
六、自撲懺法の実践
七、結 語
第三章 弘法寺釈迦才考
一、はじめに
二、迦才と道撫
三、道撫の弘法寺入寺
四、匿名の著作
五、釈子と釈迦子
六、李好徳の得度
七、結 語
第四章 道綽・善導之一家
一、はじめに
二、太宗皇帝と道綽の関係
三、沙門道撫の役割
四、道撫の学系
五、道撫と迦才の関係
六、迦才『浄土論』の実践論
七、中下根者の実践法
八、結 語
第五章 道綽伝の齟齬と矛盾
一、はじめに
二、曇鸞伝と『礼浄土十二偈』
三、玄中寺の碑文
四、太宗皇帝の玄中寺行幸
五、文徳皇后の宗教観
六、玄中寺天王殿の詩碣
七、伝者と沙門道撫
八、結 語
第六章 道綽伝成立の背景
一、はじめに
二、道綽伝の資料
三、道綽伝解明の問題点
四、『続高僧伝』『浄土論』両道綽伝の共通性
五、両道綽伝の内容比較
六、慧?門下としての道綽
七、結 語
第七章 終南山悟真寺考
一、はじめに
二、善導の悟真寺入寺説
三、悟真寺の起源
四、法華三昧との関係
五、悟真寺と浄土教
六、汾西悟真寺と藍田県悟真寺
七、結 語
第八章 善導二人説の再検証
一、はじめに
二、善導二人説
三、道綽伝の場合
四、『新修伝』の成立と楊傑の関与
五、三往生伝の比較
六、楊傑と元照の出会い
七、善導二人説の成立
八、結 語
第九章 一巻本『般舟三昧経』の伝来
一、はじめに
二、経録上の『般舟三昧経』
三、中国浄土教諸師と『般舟三昧経』
四、『金刻大蔵経』の発見
五、『観念法門私記』の証言
六、結 語
第十章 『観念法門』の虚像と実像
一、はじめに
二、『観念法門』の問題点
三、道綽と観仏三昧・念仏三昧
四、『往生礼讃』前・後序と『観念法門』
五、結 語
第十一章 中国浄土教における菩薩観
一、はじめに
二、菩薩と凡夫
三、曇鸞の菩薩観
四、過渡的菩薩観
五、凡夫意識の高揚
六、結 語
第十二章 別時念仏の起源と『観念法門』
一、はじめに
二、法然による別時念仏の実修
三、法然門下と別時念仏
四、結 語

参考文献
初出一覧
あとがき
索 引

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