インド人の思考法は、観察から法則を導き出す帰納法的思考であった。独自に発展した論証法の淵源を仏教の縁起の教えに見出した名著。
まえがき
第一章 インドに哲学はあるか?
インドの「哲学」
アーンヴィークシキー (哲学)
アーンヴィークシキー(論理的探求)
哲学の三つの伝統
ギリシャの哲学――弁論術・問答法・論証法
中国の哲学
インドの哲学
第二章 インド論理学の構造
インド哲学への歩み――神話から哲学へ
新たなる神話――業報・輪廻
哲学体系の形成
認識論・存在論・宇宙論・解脱論
ニヤーヤ学派
(一)認識論
知覚
三種の推理
『チャラカ・サンヒター』
ヴァーツヤーヤナ
推理を正当化する関係
その他の知識手段
(二)存在論
ヴァイシェーシカ学派の六つのカテゴリー
普遍と特殊
内属
実体
属性と運動
第七のカテゴリー
(三)因果論、 そして宇宙論
(四)解脱論
(五)論理学
疑いと動機
実例と定説
吟味と確定
インド論理学の領域
インドにおける論理学の地位
第三章 インドにおける討論の伝統
ウパニシャッドの神学的対話
第一の問答
第二の問答
問答の継続
最後の問答
王との対論――『ミリンダ王の問い』
討論の心得――『チャラカ・サンヒター』
討論の意味
友好的な討論のきまり
敵対的な討論に入る前の注意
敵対的な聴衆の前では論争するな
愚かな聴衆の前では劣った相手を論破し、優れた相手と論争するな
賢い聴衆の前で
論争においても道理は守るべし
聴衆を味方に付けよ
問答のための諸項目
学術書の方法(タントラ・ユクティ)
主張と反主張
敗北の立場
詭弁
討論
誤った論難
マルヴァニア先生へ
第四章 帰謬法――ナーガールジュナの反論理学
ナーガールジュナ
プランチャ――言語本能?
仏教の二つの伝統――頓悟と漸悟
アビダルマ
範疇論的実在論批判
『ヴァイダリヤ論』
相互依存の誤謬
帰謬法
論詰と詭弁
二種の否定
四句分別
破壊的トリレンマ
秤のたとえ
灯火のたとえ
三時不成の論理
四種の認識方法
『ニヤーヤ・スートラ』第二篇第一章――「三時不成の論理」批判
「秤のたとえ」と「灯火のたとえ」
『ニヤーヤ・スートラ』第五篇第一章――誤った論難
『中論頌』第一章第一偈
『中論頌』第二十五章
残余法、 あるいは消去法
『中論頌』第二章
ナーガールジュナの反論理学
再びミシガンへ
第五章 インド人の思惟方法――帰納法
ユークリッドとパーニニ
パーニニ文法学
随伴と排除――帰納法の原理
ヴァスバンドゥ
インドの論証形式――五支論証
論証のプロセス――類推
論証の誤謬――『ニヤーヤ・スートラ』の疑似的理由
「因の三相説」――誤った理由の反省から正しい理由の発見へ 類比推理から帰納推理へ
帰納領域の分析
ディグナーガ――遍充関係
九句因説
三種の疑似的理由
正しい理由
ディグナーガの論証式――三支論証
ウッディヨータカラの十六句因
純粋否定因
ヘンペルのカラス
帰納法の問題
ディグナーガ――アポーハ論
随伴と排除――ことばの表示機能
開かれた論理学
ダルマキールティ――遍充関係の根拠づけ
ダルマキールティのアポーハ論
本質的結合関係――開かれた論理学から仏教論理学へ
ダルマキールティの論証式
他心の存在論証
ダルマキールティ以降のインド論理学
インド人の思惟方法=帰納法
再びバークレーへ、トゥールミンとの出会い
最後に、喫緊の当否を推理する
あとがき
文庫版あとがき
参考文献
写真撮影・肥塚 隆