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太夫から、神職へ——。身分は変われど神楽は続く。
広島県庄原市に伝わる比婆荒神神楽は、なぜ350年以上も継続されてきたのか。
その「伝承の原動力」とは何か。
備後一宮から認証を受けた神仏混淆の「太夫」は、やがて吉田神道配下の「社人」 となり、明治には国家神道下の「神官」、現在も神社本庁包括下の「神職」として宗教活動を継続してきた。身分や社会の変化に応じて神楽をブランディングする「人」の創造性に注目した、画期的な神楽の社会史。
序論
第一章 研究史の整理と本論文の視角
一 民間神楽の研究史と方法的課題
二 比婆荒神神楽に関する研究史
三 本書の課題
第二章 比婆荒神神楽の概要
一 調査地の概要と神楽が行われる時期・種類
二 比婆荒神神楽を伝承する宗教者
三 比婆荒神神楽の演目
第一部 神楽を伝承する太夫の社会的立場と宗教活動
第一章 中近世における社人の組織と階層
一 中世末における備北地方の社人
二 近世初期における神楽の記録
三 近世における奴可郡の神職と京都吉田家
四 近世奴可郡における社人の組織・階層
五 小括
第二章 近世における社人の宗教活動とその権利
一 近世奴可郡における神社・小祠祭祀の在り方
二 近世中期における社人の宗教活動
三 神社祭祀に関する権利
四 「旦那」「旦家」の権利
五 小括
第三章 明治初期の宗教政策と備北地方の神職の動向
一 新たな宗教行政機関の成立
二 神職補任制度の変化
三 近代社格制度の成立と社人の変遷
四 神社・小祠祭祀の変化
五 祭式の講習と近代的神道人の登場
五 小括
第四章 備北地方における太夫の現在
一 第二次大戦後における備北地方の神職
二 太夫の一年の祭祀活動
三 氏子からの依頼に応える祈祷活動
四 太夫の社会的地位
五 小括
第二部 太夫が執行する儀礼の変遷
第一章 杤木家文書に見る太夫の宗教活動の変遷
一 資料の所蔵元杤木家について
二 神楽の次第と能
三 祭文・経典・祝詞
四 呪符・御札
五 小括
第二章 梓弓による口寄せ儀礼――「六道十三佛之カン文」の位置づけをめぐって
一 「六道十三佛之カン文」の儀礼構造
二 梓巫女の口寄せ儀礼との比較
三 小括
第三章 広島県庄原市西城町(旧奴可郡)の神弓祭
一 神弓祭の研究史
二 神弓祭が行われる時期・文脈
三 「神弓祭」の次第
四 祭場の準備(仕構)
五 神迎え
六 神遊び
七 神送り
八 小括
第三部 比婆荒神神楽の近現代史
第一章 広島県の神楽が経験した近代――政治・民俗学・国家神道
一 広島県神職会の概要
二 明治期における神楽規制・改善
三 大正期における神楽規制・改善
四 昭和初期における神楽規制・改善
五 小括
第二章 神楽と国譲り神話――近代における芸能の創造
一 「国譲りの能」とは
二 杤木家蔵の近代の神楽台本
三 台詞の即興性と多様な知識
四 宗教知識の諸相
五 小括
第三章 比婆荒神神楽の近代――新たな執行体制の成立と稼ぎとしての神楽
一 近世における神楽をめぐる諸権利
二 明治期の比婆荒神神楽
三 たたら製鉄の不振と農閑期の稼ぎとしての神楽
四 地元以外での遠征公演
五 研究者の来訪
六 神道界にとっての模範的神代神楽社
七 小括
第四章 近現代における名の変容と神楽の継承
一 近世の名と大神楽:小規模名単独での大神楽の執行
二 小規模名の【合同】による存続
三 本山三宝荒神社を【合祀】することによる存続
四 名と本山荒神信仰の【再編】による存続
五 小括
第五章 比婆荒神神楽の現代的展開
一 文化財名称としての「比婆荒神神楽」
二 比婆荒神神楽として認められたモノ
三 祖霊加入の儀式論が果たした役割
四 新たな伝承者の登場
五 開催形態の違い
六 小括
結論
参考文献
初出一覧
あとがき