法藏館書店ニュース - 2025.03.27
空の時代の『中論』について
「空」の思想は、デジタル技術によって生じる新たな自然観――いわゆる「計算機自然(デジタルネイチャー)」と――呼応的に再構築される可能性を秘めている。(落合陽一)
人類哲学の至宝『中論』の神秘のヴェールが、吹きとばされてしまった!
あらわれたのは、厳密で、美しいロジックのクリスタルだった。(しんめいP)
◎最重要かつ不可解な書物『中論』
大乗仏教の思想を華々しく起爆させたもっとも重要な書物『中論』(Mūlamadhyamaka-kārikā)。しかし、特異なロジックをとことん執拗に駆使して展開されるその最高度に複雑な議論は実際にはまるで理解されず、《この世のあらゆるものが空であること》を結論づけるための奇想天外な逆説、もしくは超論理と受け取られるのがせいぜいであった。
『今日のアニミズム』で道元、『空海論/仏教論』で空海を論じた著者が、新潟県の「弥彦温泉 みのや」「越後長野温泉 嵐渓荘」「蓬平温泉 和泉屋」を舞台にナーガルジュナ『中論』全27章を僧侶たちと夜を徹して語り合う…
◎本書に登場する哲学者たち
《私たちはどこから来て どこへ行くのか?》 ライプニッツの「連続律、最善律」、プラトン・ソクラテスの「魂の不死、想起説」、レヴィ=ストロースの「構造主義」、その源流としての古代ギリシアのエンペドクレスの「四大元素説」、ウパニシャッドの哲人ウッダーラカ・アールニの「三分結合説」、そして現代哲学までを渉猟する知的冒険。初期仏教と大乗仏教を結ぶ最大のミッシング・リンク『中論』をすべて読み解く!
◎8つの道標
『中論』という書物が読み解けるということは本書にとっては次のもろもろの疑問をすべてクリアすることを意味する…
(1)ナーガールジュナが『中論』第1章で「縁起」を否定しているように見えるのに、第26章でふたたび十二支縁起を採り上げたりするのはなぜなのか?
(2)最初の「帰敬序」に登場する「八不」(不生不滅、不常不断、不同不異、不来不去)は、なぜあの四種類でなければならないのか? また「Aでも非Aでもない」という第四レンマのロジックが、その四種にだけ適用されるのはなぜなのか?
(3)初期仏教と大乗仏教との関係やその連続性はいかなるものなのか?
(4)輪廻や輪廻主体についてどう考えたらいいのか?
(5)第2章の議論と、その後『中論』で展開される認知論や、時間論、原因と結果についての議論などとの関わりはどのようなものか?
(6)第2章と八不との関係はどのようなものか?
(7)一異門破や三時門破、五求門破というナーガールジュナの独特のロジックは何を意味するのか?
(8)ナーガールジュナ以後に発展した大乗仏教が、ナーガールジュナの思想からどのように芽吹いているのか?
※ 特別寄稿「『空の時代の『中論』について』に寄せて」落合陽一
第1回大会 弥彦温泉 みのや講義
―『中論』第1章・第2章講読―
はじめに(1)みのや大会開催の顛末と後日譚
ナーガールジュナにであうための準備
講義録
帰敬序
第1章 因縁の考察
第2章「去る者」と「去るはたらき」を巡る考察
質疑応答
第2回大会 越後長野温泉 嵐渓荘講義
―『中論』第3章から第16章講読―
はじめに(2)嵐渓荘大会開催の顛末
資料編 ナーガールジュナと議論するための準備
講義録
第3章 認知能力の考察
第4章 五蘊の考察
第5章 六界の考察
第6章 「欲望によって汚れること」と「欲望によって汚れる者」の考察
第7章 行によって作られたもの(有為法、saṃskṛta-dharma)の考察
第8章 「業(karman)」と「業の主体(kāraka、作者)」の考察
第9章 三時門破と第四レンマについての考察
第10章 「火と薪(燃料)」の譬えについての考察
第11章 無始無終についての考察
第12章 苦しみの考察
第13章 諸行(saṃskāra)の考察
第14章 合一と別異についての考察
第15章 自性の考察
第16章 繋縛と解脱との考察
質疑応答
第3回大会 蓬平温泉 和泉屋講義
―『中論』第17章から第27章講読―
はじめに(3)蓬平温泉和泉屋大会開催の顛末
資料編 ナーガールジュナからブッダに還るための準備
講義録
第17章 業と果報の考察
第18章 アートマンの考察
第19章 時間の考察
第20章 原因と結果の考察
第21章 生成と壊滅の考察
第22章 如来の考察
第23章 顛倒(誤った見解)の考察
第24章 四諦の考察
第25章 ニルヴァーナの考察
第26章 十二支縁起の考察
第27章 悪しき見解の考察
質疑応答
付録・絶対矛盾的自己同一編―西田幾多郎を読む―(WEB公開)
アイアムアブディストとは(ABOUT IAAB)
あとがき 清水高志