間宗教テクスト論

中世日本の宗教世界

中世日本の越境的テクストに着目し、多様な文芸・図像・儀礼の連関から動的な中世像を描く

著者 阿部 泰郎
出版社 名古屋大学出版会
ジャンル 日本仏教 > 日本仏教総論
出版年月日 2026/03/12
ISBN 9784815812249
判型・ページ数 A5・592ページ
定価 本体7,200円+税
在庫 在庫あり
交渉・抗争する文芸・図像・儀礼──。従来の文学史や思想史などの枠組みでは捉えきれない、中世日本の越境的なテクストに着目し、聖徳太子をめぐる伝承から、慈円・西行・後深草院二条らの作品、さらには絵巻を彩るイメージとその記憶、白熱する論義や宗論まで、多様な間テクストの連環によって生起する動的な中世像を描きだした挑戦作。
序 章 〈間宗教テクスト〉論の展望
     1 中世宗教テクストの相貌
     2 〈間宗教テクスト〉とは何か

  第Ⅰ部 聖徳太子と〈間宗教テクスト〉

 序 説 仏教神話としての聖徳太子伝

第1章 海を越えた聖典
      ――〈間宗教テクスト〉としての伝記と聖遺物
     はじめに ―― 転生する聖徳太子
     1 仏法伝来を象る慧思再誕説と法華経
     2 〝聖遺物〟と化した細字法華経
     3 太子「前生所持経」の創出 ―― 定海勘文
     おわりに ―― 太子像に籠められた細字法華経

第2章 片岡山飢人伝承の生成と変成
      ――〈間宗教テクスト〉による共有知
     はじめに ――〈間宗教テクスト〉としての片岡山飢人伝承
     1 『書紀』と『霊異記』の差異
     2 片岡山伝承の生成
     3 仏教説話と和歌における片岡山説話の展開
     4 片岡山飢人伝承の解釈学と物語化
     5 中世宗教権門間抗争の焦点
     おわりに ―― 飢人伝承を創成する〈間宗教テクスト〉

第3章 片岡山飢人説話再考
      ―― 光定『伝述一心戒文』が創出する仏教神話
     はじめに ―― 古代太子伝と仏教神話の創成
     1 最澄の太子崇敬と『天台法華宗付法縁起』
     2 光定『伝述一心戒文』の伝言(メッセージ)
     おわりに ――『伝述一心戒文』による仏教神話創成

第4章 南無仏太子像の文化的記憶
     はじめに ―― 南無仏太子の誕生
     1 拳内御舎利と南無仏太子の生成
     2 太子童子形図像の展開と南無仏太子像の誕生
     3 南無仏太子像内納入〈間宗教テクスト〉の世界
     おわりに ―― 南無仏太子像の文化的記憶

  第Ⅱ部 〈間宗教テクスト〉の表現主体

 序 説 〈間宗教テクスト〉の越境者たち

第5章 貞慶と慈円
      ――〈間宗教テクスト〉の楕円宗教空間
     はじめに ―― 貞慶と慈円の二重焦点
     1 貞慶の宗教テクスト創成 ―― 自利利他の実践
     2 慈円の宗教テクスト創成 ―― 真俗二諦の実現
     おわりに ―― 中世宗教世界を生みだす主体

第6章 秘伝の領域
      ―― 慈円と聖徳太子伝
     はじめに ―― 中世の密教伝授テクスト体系
     1 慈円における「秘事口伝」の認識と実践
     2 『毗逝別』における「秘伝」の輪郭
     3 『毗逝別』秘伝言説の創成
     4 慈円の太子崇敬と秘伝
     おわりに ――〈間宗教テクスト〉としての秘事口伝

第7章 六道語りの系譜
     はじめに ―― 慈円『六道釈』は何をもたらしたか
     1 慈円をめぐる諸位相の六道語り
     2 女院の六道語りと慈円の接点
     おわりに ―― 雪の朝に交わされた歌

第8章 越境者の〈間宗教テクスト〉
      ―― 西行と後深草院二条
     はじめに ――「西行」という〝越境〟
     1 越境する西行
     2 『とはずがたり』における二条の越境
     おわりに ―― 開かれた可能性としての西行と二条

第9章 歌う聖
      ―― 聖の詠歌行為
     はじめに ―― 僧侶の詠歌をめぐって
     1 空也の歌
     2 行基の歌
     3 僧賀の歌
     おわりに ―― 聖の歌の地平へ

第10章 歌を書きつける聖
      ―― 西行・一遍・覚如の系譜
     はじめに ―― モノに書かれる歌
     1 歌を書きつける西行
     2 詠歌を書きつける聖たち ―― 空也と達磨
     3 絵伝中に歌を書きつける聖 ―― 一遍・他阿・覚如
     おわりに ―― 詠歌を書きつける聖のはたらき

第11章 縁起を創る聖
      ――『一遍聖絵』縁起の諸位相
     はじめに ―― 巡礼記としての『聖絵』
     1 『聖絵』における一遍の寺社霊場参詣
     2 『聖絵』における縁起説の諸位相
     3 一遍による縁起の探求と生成
     4 書写山縁起の性空と『聖絵』の一遍
     おわりに ―― 祖師絵伝に創成される縁起説

第12章 参宮する聖
     はじめに ――「参宮」とは何か
     1 伊勢に参る西行とその歌
     2 〝参宮する西行〟の諸テクスト
     3 西行に倣う参宮記としての『とはずがたり』
     おわりに ―― 参宮記という〈間宗教テクスト〉

第13章 捨身する尼と代受苦
      ――『とはずがたり』と泣不動説話
     はじめに ―― 宗教文学としての『とはずがたり』
     1 崩御記と御産記を結ぶ「命に代りたる本尊」
     2 泣不動説話の展開と変奏
     3 泣不動説話が照らす宗教的文脈
     おわりに ――「隠れたる信」を体現する

  第Ⅲ部 論争を記憶する〈間宗教テクスト〉

 序 説 聖俗を懸け渡す
      ――〈間宗教テクスト〉の基底と展開

第14章 論義と宗論の文化史
      ――〈間宗教テクスト〉の母胎(マトリックス)
     はじめに ―― 論義とは何か
     1 日本仏教における論義
     2 論義法会としての維摩会の意義と表象
     3 論義が生みだす公共言説空間と宗論
     4 仏教世界の内部と外部を媒介する宗論
     5 宗教文芸テクストの母胎となる論義と宗論
     おわりに ――〈間宗教テクスト〉の母胎

第15章 破邪顕正の系譜
      ―― 宗論テクストの諸相と展開
     はじめに ―― 中世仏教の動態を映し出す宗論
     1 「破邪顕正」の連環 ―― 顕密仏教内外にわたる宗論の連鎖
     2 中世宗論と諸宗論の焦点としての禅
     3 再発見される中世宗論と諸宗論
     おわりに ―― 宗論から展望される〈間宗教テクスト〉の可能性

第16章 悲母を勧進する
      ―― 源信と覚超の講式・伝記・仮名法語
     はじめに ――〈間宗教テクスト〉概念による課題の再設定
     1 覚超の修善講式と登曽津物語
     2 恵心僧都とその母の往生物語
     3 源信仮託仮名法語『真如観』のメッセージ
     4 ハーバード美術館「異本真如観」からの照射
     おわりに ―― 源信に託すテクストと恵心を語るテクスト

第17章 迎講を伝承する
      ―― 往生儀礼の語り口
     はじめに ―― 迎講とは何か、その創成と源信
     1 源信による迎講創始伝承
     2 丹後天橋立の迎講創始説話
     3 『今昔物語集』の迎講説話
     おわりに ―― 迎講という〈間宗教テクスト〉儀礼

第18章 抗争からの遁走
      ――『秋夜長物語』の3つの文脈
     はじめに ―― 宗教テクストとしての『秋夜長物語』
     1 宗論の焦点 ―― 山寺抗争の文脈
     2 神の随喜 ―― 新羅明神夢想託宣説話の文脈
     3 和歌による救い ―― 西行と瞻西の唱和の文脈
     おわりに ――〈間宗教テクスト〉としての『秋夜長物語』

第19章 紙上の伽藍
      ――『桂地蔵記』の創成主体
     はじめに ――室町時代の「記」と「日記」
     1 中世真名本としての『桂地蔵記』
     2 『桂地蔵記』の構成と方法
     3 『桂地蔵記』の表現世界と意図
     4 『看聞日記』の桂地蔵一件と伏見宮継承
     おわりに ――『桂地蔵記』のメッセージ

終 章 戯笑する宗論・詠歌・法語
     1 宗論する異類と絵巻
     2 遊戯する聖の歌と魔界
     3 相克する教化と法語
     4 越境する慈円

 注
 あとがき
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