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スティラマティ『五薀論釈』における五位百法対応語【インド学仏教学叢書27】
仏教用語の現代基準訳語集および定義的用例集
スティラマティ(安慧, 510-570頃)は、瑜伽行・唯識思想関連の論書を中心に、多くの論書に対する注釈文献を残した。
とくに近年は、本書が扱うヴァスバンドゥ(世親)作『五蘊論』Pancaskandhaka に対する注釈 、および同じヴァスバンドゥ作の『阿毘達磨倶舎論』Abhidharmakota に対する注釈のサンスクリット語写本が発見され、それぞれに研究が進められつつある。
また、スティラマティが注釈の中で援用するヴァスバンドゥの兄アサンガ作 の『阿毘達磨集論』Abhidharmasamuccaya についても、同論の新たな写本、および同論と注釈の写本が発見され、サンスクリット文翻刻が公刊されている。
とくに『五蘊論』については、ヴァスバンドゥ作の本論の出版 につづいて、スティラマティによる注釈のサンスクリット本が刊行され、研究環境は大きく進展した。
以上のような研究環境の進展を背景に、スティラマティの注釈に焦点をあて、瑜伽行派の「五位百法」に対応する心身の諸要素(法)についての定義的、あるいは主要な意味づけと用例を和訳とともに提示し、それをもとに基準訳語例を日本語と英語とで示した。
心 citta 〔心〕
心所有/心所 caitasika 〔心作用〕
遍行 sarvatraga 〔普遍的な心作用〕
別境 pratiniyatavisaya 〔特殊限定的心作用〕
善 kusala 〔善である心作用〕
煩惱 klesa 〔煩惱〕
随煩悩 upaklesa 〔付随的な煩悩〕
不定 aniyata 〔善・悪等に確定されない心作用〕
色 rüpa 〔もの〕
心不相応行 cittaviprayuktasamskāra 〔心[およびもの]に相応しない形成作用としての要素〕
無為 asamskrta 〔形成されない要素(法)〕