お寺と社会の間に溝ができ、人々から期待されなくなったのはなぜか? 多くの寺院・僧侶を取材する中で見えてきた、お寺を取り巻く状況と今後の可能性について、実例をまじえながら切り込んでいく。
はじめに
第1章 社会とお寺の関係
1 おひとり様社会
1、進む「おひとり様」化
消えた標準世帯/終活の背景も「個人化」
2、生前契約
ライフエンディングステージを支える制度/残る「誰が」問題
2 お寺の資本と可能性
1、厳しい現状と希望
コロナ禍での葬儀・法事/檀家制度は続かない/ゾンビ寺が増えていく/追い風も吹いている
2、4つの資本と3つのA
お寺の4つの資本/お坊さんに求める3つのA/典型例が「おてらおやつクラブ」
3、ソーシャル・キャピタルとサードプレイス
第3の居場所、アジールとしても/ソーシャル・キャピタルの負の側面/結合型と橋渡し型/関係人口も大事/渦を巻くように広がる
4、遺贈寄付
お寺は遺贈寄付の主要な受け手/最も純粋な贈与がつむぐ社会のつながり/遺贈寄付者に供養以外にできること/お寺への遺贈寄付実態調査
第2章 人生の終盤を支える
1 死後事務委任契約を結ぶ
1、永代供養墓を起点に
誰がお墓まで/途切れることなく関われるのがお坊さん/死後事務委任契約の内容/信頼関係があるからこその結果/専門家だけでは埋まらない「隙間」
2、現在帳
生前の檀信徒とのつながりのツール
3、小さなお寺でも
ソーシャルテンプルという試み/様々な選択肢を組み合わせる
2 看仏連携
1、地域包括ケア寺院
地域共生社会づくりにおける寺/弔いも見据えてこその地域包括ケア/在宅看取り文化喪失を背景に
2、看仏連携とは
スピリチュアルケアへの期待/そばにいていいですか?/アウェーでなくホームだからこその取り組み
3、まちの保健室
看護師のいる「居場所」/医療や介護に関わる意義と課題
3 福祉仏教
1、福祉仏教入門講座
葬式仏教から福祉仏教へ
2、お寺と教会の親なきあと相談室
生涯にわたる寄り添いと看取りの可能性/困りごとがあればお寺に
3、施設をつくる
デイサービス運営/空き家活用で地域の人たちが支援
4 老後や死を語る
1、介護者カフェ
語り合いで悩みや孤独やわらげる/愚者の自覚と共生
2、デスカフェ
死を見つめる機会/広がるNRBSとしての宗教
3、死の体験旅行
死ぬまでを疑似体験
4、グリーフケア
葬儀こそグリーフサポート/人間を照らす教えがある/「あいまいな喪失」と弔い直し
第3章 お寺に足を運んでもらう
1 場を提供する
1、本堂・境内を使ってもらう
様々な講座や体験・発表の場/「ひるね寺」で本堂開放
2、コワーキングスペース
複数のお寺が協力して開く試みも/コロナ禍だからこそ開く
3、防災拠点
避難所として自治体と協定も
2 お坊さんと一緒に
1、テンプルモーニング
お寺の掃除を一緒にするだけ/ウェルビーイングに貢献することがお寺の力に/「いてもいい場所なんだ」/ラジオ体操で地域のつながり生む
2、朝の勤行
「自由に参加を」の呼びかけ
3 イベントと告知
1、イベントの考え方
Will・Can・Needの重なるところ/自坊のミッションと行動指針/共通目標でなく共有目標を/「最初のフォロワー」を大切に
2、地域のお寺合同で
まずは認知度・存在感を高める/一定期間に地域のお寺がそれぞれ連続で/地域のお寺を機能別に分けるという主張も
3、寺子屋・こども食堂など
定期的なカフェ/寺子屋の意義/こども食堂はお寺にこそ/共同購入で都市と地方の交流を/一箱本コーナー
4、知ってもらう
掲示板は自分の思いを反映して/紙でもネットでも布教の媒体に/クラウドファンディングで物語を共有
4 お寺にとっての公共性
社会課題解決のためにお寺があるのではない/共にあることこそ
おわりに