「公共宗教」の視点から従来の仏教社会福祉史を捉え直し、近代日本における福祉をめぐる公共空間の形成過程と、そのダイナミズムとしての仏教倫理の存在を浮き彫りにする。
序 章 近代日本の福祉をめぐる公共空間と仏教
一 近代日本における公共空間への宗教の関与
二 近代日本における仏教社会福祉活動の位置付け
三 本書の構成
【第Ⅰ部 子どもをめぐる社会福祉活動と宗教】
第一章 瓜生イワの慈善事業と「福祉思想」―「人間性の尊重」と仏教倫理―
はじめに
一 明治維新期から中期の「日本型福祉」と公共性
二 近世的な地域資源と近代の接触─瓜生イワの生活者の視点と慈善─
三 国家行政・皇室との接近─慈善活動の組織化─
四 瓜生イワの「福祉」的実践と仏教倫理
おわりに
第二章 明治期における仏教倫理の展開と仏教社会福祉活動―福田会育児院の養護実践と女性の関与―
はじめに
一 仏教倫理研究の問題点─仏教思想の非社会的側面─
二 仏教社会福祉活動を支えた報恩思想と社会倫理
三 福田会育児院による衆生恩思想に基づく仏教倫理の表明
四 福田会育児院での女性の関与─上流婦人による恵愛部の設置と保母の養護実践─
五 『福田会月報』に見る福田会育児院の教育的側面と仏教倫理
おわりに
第三章 明治期のキリスト教的社会福祉活動の公共的機能―石井十次の岡山孤児院、留岡幸助の監獄改良と家庭学校―
はじめに
一 石井十次による岡山孤児院の先駆性と限界
二 明治後期の福祉をめぐる公共空間と留岡幸助
おわりに
【第Ⅱ部 セツルメントの発展と浄土宗社会派による仏教社会福祉活動】
第四章 渡辺海旭による仏教社会事業の公共的機能―ドイツ型セツルメントと共済思想―
はじめに
一 労働問題と仏教
二 社会事業への発展と仏教の公共的機能
三 渡辺海旭の社会事業観と国家主義的側面
おわりに
第五章 長谷川良信のセツルメントにおける教育的側面と社会倫理―大正期における「感恩愛人」の思想と実践―
はじめに
一 長谷川良信の労働問題対策とマハヤナ学園
二 「トゥギャザーウィズヒム」─労働問題に対する社会倫理的実践─
三 大正期における社会事業と新教育運動─長谷川良信による女子教育─
おわりに
結 章 近代日本における仏教と福祉
一 近代日本の福祉をめぐる公共空間と仏教
二 近代日本仏教の社会倫理と報恩思想
三 近代仏教史・仏教社会福祉学・社会福祉史の捉え返し─本書が示した新たな視座─
参考文献一覧
初出一覧
画像出典一覧
あとがき
索 引