親鸞が真宗の大綱として掲げる二種回向。その源泉である曇鸞『浄土論註』を改めて読み直し、真宗理解の再構築を目指す。多様に論じられてきた親鸞思想解明に向け、回向論のゆくえを尋ね、新地平を拓く、挑戦的新研究。
序言 [市野智行]
還相回向研究史―変遷と論点の整理― [市野智行]
問題の所在
一 対象文献について
二 還相回向研究の変遷
三 還相回向に関する諸理解の整理
結論 還相回向研究の展望と課題
「回向」の成立背景と「普賢行」への深化――曇鸞の五念門を考えるために―― [織田顕祐]
問題の所在
一 施与から「回向」へ
二 回向から「普賢行」への深化
三 「仏力」と「法門」の大乗的意味
結論 『論註』の回向二相の意味
普賢行と曇鸞の往還回向 [織田顕祐]
問題の所在
一 世親『浄土論』における五念門と五門行
二 曇鸞の『浄土論』理解の中心
三 曇鸞における『無量寿経』第二十二願の問題(仏前普賢と仏後普賢)
四 往還回向に関する曇鸞と親鸞の相違
結論
仏典「解釈」とその可能性――曇鸞の『浄土論』註釈を通して―― [黒田浩明]
問題の所在
一 註釈書を研究する、ということ
二 曇鸞が独自に施設する一段について
三 難易二道判が『浄土論註』冒頭に配置される意図について
四 曇鸞の時代背景
五 八番問答にみる曇鸞の機根観
六 十念往生
七「覈求其本釈」の課題性と構成
八 文章構造と解釈――十門分科について――
九 仏道観の転換――五念配釈――
十 五念門と成上起下
結論
『浄土論註』の日本的展開――源信『往生要集』の五念門説から見えてくる思想史的背景を中心に――[藤村 潔]
問題の所在
一 『浄土論註』流伝とその展開――『往生要集』成立に至る思想史的背景に注目して――
二 三論学派における『浄土論註』の受容
三 天台学派と『浄土論註』
四 『往生要集』と世親の『浄土論』
五 源信における五念門説の変容――『浄土論註』の無引用から見えてくるもの――
結論
清沢満之の他力門哲学――曇鸞教学という視座から―― [川口 淳]
問題の所在
一 『論註』の思想基盤
二 『試稿』の仏教学的背景
三 有限と無限とは何か
四 語れない無限、語る無限
五 無限の擬人化――阿弥陀仏――
六 仏身論としての他力門哲学
七 主伴互具の浄土――浄土の荘厳――
八 還相回向についての寸考
結論
各論における有機的結合と今後の可能性 [藤村 潔]
編集後記 [市野智行]
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