重版情報(2020年4月~) - 2025.05.22
ドイツ観念論と京都学派の哲学
ケルン大学・テュービンゲン大学講義録
本書では、ケルン大学、テュービンゲン大学での講義を基に、 ドイツ観念論と京都学派という思想史上の双峰を同時に見ることで、西洋哲学を哲学そのものと同一視する図式に問いを投げかけ、京都学派の新たな位置づけを試みる。歴史・自然・芸術・法・知・宗教というテーマから、ドイツ観念論の中心概念「絶対者」と京都学派の「絶対無」の遠さと近さを表出させ、現代世界の問題としていまだ効力を有する思想を見る。
凡 例
プロローグ 日本哲学の世界環境――思想進化史のガラパゴス現象
1 変化しつつある日本哲学の世界環境
2 思想進化史のガラパゴス現象――孤立性と画期性
3 「日本哲学」の新たな位置図へ
補論 「真理像の時代」
序 章 ドイツ観念論と京都学派の六つのファセット
1 誰が「ドイツ観念論」や「京都学派」の名称を言い出したか
2 四つの哲学潮流と、第五の潮流としての京都学派
3 ファセットとしての六つのテーマ
第Ⅰ部 歴 史
第1章 革命の時代のドイツ哲学界と東アジアの歴史観
1 ドイツ観念論の時代の「三つの傾向」
2 ナポレオンとヘーゲルの一回だけの「交差」
3 「宗教改革」と「ドイツ観念論」のドイツ的な由来
4 フスの時代とルターの時代とのちがい
5 「新時代」の準備としての啓蒙主義
6 ウイーン体制と三月前期
7 ドイツと日本の近代化の並行性
8 東アジアの歴史観のポテンシャル
第2章 「神」の歴史か、「絶対無」の歴史か
1 新史料「大島メモ」の発見
2 カントの歴史思想――自然とのアナロジー
3 フィヒテの歴史思想――絶対自我の歴史原理
4 シェリングの歴史思想――「神的な啓示」としての歴史
5 ヘーゲルの歴史思想――「絶対精神」の歴史
6 京都学派の「絶対無」の歴史理念
第Ⅱ部 自 然
第3章 東西の自然概念
1 「自然」、「自己」、「自我」に含まれる日本語の「自」
2 「自然法」か「実定法」か――フィヒテの女性観・結婚観と連関して
3 カントにおける「自然」
4 ヘルダーリンにおける「自然」
第4章 自然哲学と「絶対自我」
1 日本語の「我」(自我、私)
2 フィヒテの「知識学」と「絶対自我」
3 シェリングの自然哲学
4 ヘーゲルの自然哲学
5 自然哲学と自然科学の新たな関係へ
6 京都学派の「自然」とドイツ観念論の「自然」の遠近さ
第5章 〔特講〕デカルト・スピノザ・ライプニッツの「自然」
1 中世と近世の二方向を向く「ヤヌスの首」デカルト
2 コペルニクスとケプラーの場合
3 スピノザとライプニッツによるデカルト超克
4 「機械論的世界観」から「生命論的世界観」への近代的展開
第Ⅲ部 芸 術
第6章 ロマン主義とカント美学
1 「芸術」――自然の模倣か、芸術意欲による創作か
2 「新旧論争」
3 芸術考察の三つの領域
4 初期ロマン主義
5 ロマン主義のさまざまな領域
6 カント美学――「美的判断力」の考察
7 種々のイロニー概念
8 京都学派の芸術理解、その1――「芸術」か「芸道」か
第7章 ヘーゲルの「芸術の過去性」テーゼ
1 カントの「自然美」とヘーゲルの「芸術美」
2 シェリングの芸術哲学、その1――美的直観
3 ヘーゲルの芸術哲学――「芸術の過去性」テーゼとその射程
4 シェリングの芸術哲学、その2――「異教的なもの」としての芸術
5 京都学派の芸術理解、その2――西田幾多郎の場合
第Ⅳ部 法
第8章 カント、フィヒテ、ヘーゲル、そして西谷啓治
1 ドイツ語の「法」と日本語の「法」
2 ドイツ観念論の法哲学
3 カントの法哲学――汝なすべし
4 フィヒテの法哲学――自然法とその帰結
5 ヘーゲルの法哲学、その1――「欲望/需要の体系」としての市民社会
6 ラートブルッフ「五分間の法哲学」
7 京都学派の法思想、その1――西谷啓治「国家の無我性」という考え
第9章 国家と社会の弁証法
1 ヘーゲルの法哲学、その2
2 京都学派の法思想、その2
第Ⅴ部 知
第10章 物自体という壁
1 「何かを知る」とはどういうことか――「チャットGPT」断想
2 東洋思想における「不知の知」
3 西洋哲学の中にも顔を出す「絶対無」
4 カント――「不可知の物自体」が招くジレンマ
5 カント以後の思想家群像
6 西田哲学における「知」
第11章 絶対知をめぐる「巨人の戦い」
1 論争書簡、論争著述
2 フィヒテとシェリングの共通点と相違点
3 フィヒテの絶対知
4 シェリングの絶対知
5 ヘーゲルの絶対知
6 西谷啓治の「般若知」
第Ⅵ部 宗 教
第12章 ニヒリズムの胎動
1 絶対者の現前の場としての宗教
2 ドイツ観念論の宗教の歴史的背景
3 絶対者と絶対無(部分的反復)
4 フィヒテにおけるニヒリズムの意味
5 西田の「宗教的世界観」――田辺の西田批判、その2
第13章 「無底」――ドイツ観念論と京都学派の邂逅地点
1 西谷啓治の「自由論」和訳がドイツ語版の編纂史に投じた一石
2 ハイデッガーのシェリング「自由論」解釈――「無底」を迂回する理由
3 西谷における神秘主義の自己化(Aneignung)と奪自己化(Enteignung)
4 西谷テーゼ「絶対空が真の無底である」
エピローグ ヘーゲル哲学と西田哲学の切り結び点
1 西田の「私の立場」とは何であったか
2 西田は「ヘーゲル弁証法」をどう再構成したのか
3 西田の立場から見たヘーゲルとの切り結び点
あとがき 鎮魂曲の想を兼ねて
索 引
プロローグ 日本哲学の世界環境――思想進化史のガラパゴス現象
1 変化しつつある日本哲学の世界環境
2 思想進化史のガラパゴス現象――孤立性と画期性
3 「日本哲学」の新たな位置図へ
補論 「真理像の時代」
序 章 ドイツ観念論と京都学派の六つのファセット
1 誰が「ドイツ観念論」や「京都学派」の名称を言い出したか
2 四つの哲学潮流と、第五の潮流としての京都学派
3 ファセットとしての六つのテーマ
第Ⅰ部 歴 史
第1章 革命の時代のドイツ哲学界と東アジアの歴史観
1 ドイツ観念論の時代の「三つの傾向」
2 ナポレオンとヘーゲルの一回だけの「交差」
3 「宗教改革」と「ドイツ観念論」のドイツ的な由来
4 フスの時代とルターの時代とのちがい
5 「新時代」の準備としての啓蒙主義
6 ウイーン体制と三月前期
7 ドイツと日本の近代化の並行性
8 東アジアの歴史観のポテンシャル
第2章 「神」の歴史か、「絶対無」の歴史か
1 新史料「大島メモ」の発見
2 カントの歴史思想――自然とのアナロジー
3 フィヒテの歴史思想――絶対自我の歴史原理
4 シェリングの歴史思想――「神的な啓示」としての歴史
5 ヘーゲルの歴史思想――「絶対精神」の歴史
6 京都学派の「絶対無」の歴史理念
第Ⅱ部 自 然
第3章 東西の自然概念
1 「自然」、「自己」、「自我」に含まれる日本語の「自」
2 「自然法」か「実定法」か――フィヒテの女性観・結婚観と連関して
3 カントにおける「自然」
4 ヘルダーリンにおける「自然」
第4章 自然哲学と「絶対自我」
1 日本語の「我」(自我、私)
2 フィヒテの「知識学」と「絶対自我」
3 シェリングの自然哲学
4 ヘーゲルの自然哲学
5 自然哲学と自然科学の新たな関係へ
6 京都学派の「自然」とドイツ観念論の「自然」の遠近さ
第5章 〔特講〕デカルト・スピノザ・ライプニッツの「自然」
1 中世と近世の二方向を向く「ヤヌスの首」デカルト
2 コペルニクスとケプラーの場合
3 スピノザとライプニッツによるデカルト超克
4 「機械論的世界観」から「生命論的世界観」への近代的展開
第Ⅲ部 芸 術
第6章 ロマン主義とカント美学
1 「芸術」――自然の模倣か、芸術意欲による創作か
2 「新旧論争」
3 芸術考察の三つの領域
4 初期ロマン主義
5 ロマン主義のさまざまな領域
6 カント美学――「美的判断力」の考察
7 種々のイロニー概念
8 京都学派の芸術理解、その1――「芸術」か「芸道」か
第7章 ヘーゲルの「芸術の過去性」テーゼ
1 カントの「自然美」とヘーゲルの「芸術美」
2 シェリングの芸術哲学、その1――美的直観
3 ヘーゲルの芸術哲学――「芸術の過去性」テーゼとその射程
4 シェリングの芸術哲学、その2――「異教的なもの」としての芸術
5 京都学派の芸術理解、その2――西田幾多郎の場合
第Ⅳ部 法
第8章 カント、フィヒテ、ヘーゲル、そして西谷啓治
1 ドイツ語の「法」と日本語の「法」
2 ドイツ観念論の法哲学
3 カントの法哲学――汝なすべし
4 フィヒテの法哲学――自然法とその帰結
5 ヘーゲルの法哲学、その1――「欲望/需要の体系」としての市民社会
6 ラートブルッフ「五分間の法哲学」
7 京都学派の法思想、その1――西谷啓治「国家の無我性」という考え
第9章 国家と社会の弁証法
1 ヘーゲルの法哲学、その2
2 京都学派の法思想、その2
第Ⅴ部 知
第10章 物自体という壁
1 「何かを知る」とはどういうことか――「チャットGPT」断想
2 東洋思想における「不知の知」
3 西洋哲学の中にも顔を出す「絶対無」
4 カント――「不可知の物自体」が招くジレンマ
5 カント以後の思想家群像
6 西田哲学における「知」
第11章 絶対知をめぐる「巨人の戦い」
1 論争書簡、論争著述
2 フィヒテとシェリングの共通点と相違点
3 フィヒテの絶対知
4 シェリングの絶対知
5 ヘーゲルの絶対知
6 西谷啓治の「般若知」
第Ⅵ部 宗 教
第12章 ニヒリズムの胎動
1 絶対者の現前の場としての宗教
2 ドイツ観念論の宗教の歴史的背景
3 絶対者と絶対無(部分的反復)
4 フィヒテにおけるニヒリズムの意味
5 西田の「宗教的世界観」――田辺の西田批判、その2
第13章 「無底」――ドイツ観念論と京都学派の邂逅地点
1 西谷啓治の「自由論」和訳がドイツ語版の編纂史に投じた一石
2 ハイデッガーのシェリング「自由論」解釈――「無底」を迂回する理由
3 西谷における神秘主義の自己化(Aneignung)と奪自己化(Enteignung)
4 西谷テーゼ「絶対空が真の無底である」
エピローグ ヘーゲル哲学と西田哲学の切り結び点
1 西田の「私の立場」とは何であったか
2 西田は「ヘーゲル弁証法」をどう再構成したのか
3 西田の立場から見たヘーゲルとの切り結び点
あとがき 鎮魂曲の想を兼ねて
索 引