植民地朝鮮と日本仏教 【龍谷叢書31】

著者 中西 直樹
出版社 三人社
ジャンル 歴史・資料 > 歴史
出版年月日 2013/10/25
ISBN 9784906943401
判型・ページ数 A5・308ページ
定価 本体4,800円+税
在庫 お取り寄せ
アジア布教は日本の敗戦後に途絶して、戦後も再開の気運が生じてこなかった。その原因には、敗戦による布教拠点の喪失や在留邦人の引き揚げ、アジア諸国との関係や現地の排日感情などもあろうが、それだけで説明がつく問題とも言えない。何よりも、日本仏教各宗派が、仏教思想の普遍性を根本から問いなおし、アジア諸国との対話・交流を重ねる努力を怠ってきた点に求められるべきであろう。本書は、日本仏教のアジア布教事業の実態解明と検証を試みた一冊である。
序 章 
  本論文執筆に至る経緯  
  本書の概要 
  アジア布教史研究の意義 

第一章 明治前期・真宗大谷派の海外進出とその背景 
─ 北海道開拓・欧州視察・アジア布教─ 

  はじめに 
一 日本仏教の海外布教への基本姿勢 
  日清戦争後の海外布教の立場 
  万国宗教会議への消極的姿勢 

二 北海道開拓とその背景 
  『北海道百年』への大谷派関係の対応 
  大谷派関係者の北海道開拓観 
  北海道開拓着手の事情 
  北海道開拓の反響 

三 宗派内の対立と欧州視察 
  旧家臣団と改革派との抗争 
  江藤新平への接近と現如の渡欧 
  欧州視察に関する先行研究 
  欧州視察の目的 
  本願寺派との認識の相違

四 江藤新平「対外策」と中国布教の開始 
  江藤新平「対外策」 
  江藤の渡欧要請の意図 
  伊地知正治と小栗栖香頂の中国渡航 
  大教院分離をめぐる宗派内対立 
  中国布教の本格始動 
  中国布教の目的とその実態 

五 朝鮮布教開始とその後 
  朝鮮布教の着手と宗派の事情 
  政府側の朝鮮布教への期待 
  大谷派の親日派育成活動 
  大谷派朝鮮布教の挫折 
  おわりに 

第二章 日蓮宗の初期朝鮮布教 
─ 布教開始から僧尼入城解禁直後まで─

  はじめに 
一 日蓮宗の布教開始とその背景 
  朝鮮布教のはじまりと旭日苗 
  朝鮮布教開始の背景 
  日蓮宗教団改革の動向 
  宗内対立の経緯とその後 
二 日宗海外宣教会と朝鮮布教の進展 
  旭日苗の布教意図 
  加藤文教と朝鮮僧侶教育計画 
  旭日苗の再渡航と海外宣教会の組織 
  日清戦争開戦と日蓮宗の対応
  朝鮮布教をめぐる議論 
三 佐野前励による僧侶入城の解禁とその後 
  佐野前励の朝鮮渡航のねらい 
  岡本柳之助の支援 
  佐野前励の活動と僧尼入城解禁 
  佐野前励の帰国後の状況 
  日本留学生・留学僧のその後 
  おわりに 

第三章 朝鮮植民地化過程と日本仏教の布教活動 
    ─ 日清戦争から初期の朝鮮総督府治政まで─

  はじめに 
一 日清戦争下での各宗派の動向 
  本願寺派・加藤恵証の朝鮮視察 
  慰問使・従軍布教使の派遣 
  従軍布教使の慈善活動 
  日清戦争期の朝鮮開教論 
  本願寺派の暗躍 
  大洲鐡然の朝鮮布教計画 
二 日清戦争後における各宗派の朝鮮進出
  在留邦人の増加と日本仏教の朝鮮進出 
  日清戦争直後の各宗の動向 
  反日義兵運動の高まりとその影響 
  反日運動沈静後の各宗の動向 
  浄土宗朝鮮布教の躍進
  元興寺の創建と浄土宗への圧力 
三 日露戦争後における朝鮮寺院の末寺化競争 
  日露戦争後の各宗の動向 
  浄土宗の朝鮮仏教支配の目論み 
  朝鮮寺院支配と統監府の対応 
  朝鮮寺院末寺化競争の激化 
  武田範之と円宗併合計画 
四 朝鮮総督府の宗教行政と日本仏教 
  曹洞宗の「併合」計画と寺刹令 
  総督府の抑圧策と朝鮮人信徒の減少 
  在留邦人対象布教への転換 
  布教規則・神社寺院規則の制定 
  初期総督府の対仏教施策 
  おわりに 

第四章 文化政治と朝鮮仏教界の動向
    ─朝鮮仏教団の活動を中心に─

  はじめに 
一 文化政治下での宗教政策の転換と朝鮮仏教界 
  三・一独立運動後の朝鮮仏教の動向 
  総督府の仏教施策と朝鮮仏教界の対立 
  中央教務院の設立
二 三・一運動後の日本仏教の対応 
  朝鮮人布教に向けた機運の高まり 
  仏教朝鮮協会の設立 
  仏教朝鮮協会の事業展開 
  仏教社会事業の推進 
三 「内鮮融和」運動の組織化と朝鮮仏教大会 
  中村健太郎の経歴 
  同民会の設立 
  朝鮮仏教大会の設立 
四 日本政財界の支援と朝鮮仏教団への改組 
  財団法人化に向けた機構整備 
  日本政財界・日本仏教界の支援 
  財団法人朝鮮仏教団への改組 
  朝鮮仏教団の事業実態 
  三浦参玄洞の文化政治批判 
五 朝鮮仏教大会の開催とその反響 
  朝鮮仏教大会計画の浮上 
  大会の開催意図と朝鮮仏教側の反応 
  朝鮮仏教大会の開催 
  朝鮮仏教大会の反響 
  朝鮮仏教普及会の結成 
  おわりに 

第五章 一九三〇年代朝鮮総督府の宗教施策と日本仏教 
    ─ 心田開発運動と真宗大谷派の動向を中心に─
  
  はじめに 
一 朝鮮仏教界の停滞 
  日本仏教・朝鮮仏教の朝鮮人信徒数の推移 
  大谷派と本願寺派の教勢 
二 大谷派の教勢挽回に向けた施策 
  大谷派法主夫妻の朝鮮巡教 
  朝鮮人布教者の登用と開教団総会 
  朝鮮人布教者の養成 
三 心田開発運動とその展開 
  宇垣総督と国民精神作興運動 
  心田開発運動の始動 
  心田開発運動の展開と敬神思想 
  心田開発運動への批判 
四 国民総動員体制と大谷派の動向 
  心田開発運動と大谷派の対応 
  日中戦争下での皇民化施策と宗教対策 
  弥陀教の集団帰属 
  『朝鮮の類似宗教』刊行とその影響 
  弥陀教集団帰属の背景 
  おわりに 

第六章 巖常圓と大聖教会 

  はじめに 
一 巖常圓の経歴と朝鮮渡航の経緯 
  巖常圓の修学状況 
  武田篤初の朝鮮布教計画 
  朝鮮渡航とその後の常圓 
二 大聖教会の設立とその布教活動 
  巖常圓の慶尚南北道での事業 
  本願寺派の朝鮮進出 
  大聖教会の設立とその活動 
  大聖教会の発展 
三 韓国併合後の状況の変化と巖常圓の対応 
  巖常圓の引退と韓国併合の影響 
  本願寺派の方針転換と大聖教会の衰退 
  教誨師としての巖常圓 
  おわりに 

  あとがき 
  索引

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