お地蔵さん、お稲荷さん、七福神、エエジャナイカ――民衆の関心と欲求によって爆発的に流行し、不要になれば棄てられ廃れていった「はやり神」。多様な事例からその特徴を解明し、背景にある日本人の心理や宗教意識にも迫る。
はしがき
はじめに――流行神研究の意義
民俗学的立場から/熱狂的な信仰/流行の意味/風俗の民俗/他
Ⅰ 流行神の諸相
1 流行神の出現
太郎稲荷/翁稲荷/五瀬明神/民間宗教家の関与/神出現の方式/他
2 願かけの諸相
雨乞い/疫病送り/橋のぎぼし/瘧の神/三途川の老婆/願かけの禁忌/絵馬/他
3 流行神と地域社会
地域社会との関係
一 古峯信仰
鬼の住む所/金剛童子/妙義山と秋葉山/日光修験の宣伝/火伏せの霊験/古峯の祟り/他
二 愛宕信仰
広峰信仰/愛宕信仰の習俗化/愛宕の火祭り/地蔵盆との習合/他
三 恵比須信仰
神主山内家/恵比須の霊験/神がかりする女/山内家の屋敷神/他
Ⅱ 流行神の系譜
1 御霊信仰の系譜
御霊の発生/御霊会/骨の祟り/伴善男の御霊
2 和霊信仰の系譜
古骨さま/宇和島の和霊/権威跪拝型/藩主が霊神へ/御霊から和霊へ/他
3 疱瘡神の福神化
疱瘡送り/疱瘡神の託宣/家の神化する疱瘡神/疱瘡神は祖霊か/他
4 福神信仰の系譜
七福神の起源/三面大黒天/大黒とネズミ/エビス講の変遷/二十日エビス/他
Ⅲ 流行神仏の性格
1 近世寺院と流行神仏
幕府の宗教政策/小日向の大日堂/縁日/開帳/成田山信仰/他
2 境内仏と鎮守神
地蔵信仰/不動信仰/こんにゃく閻魔/人の言ではやりだす/他
3 霊験の機能化と統合化
民衆の欲求に応じて/眼病の神/稲荷の霊験/お札の意味/呪物崇拝/他
Ⅳ 流行神の思想
1 流行神と終末観
社会不安の中から/地震鯰の信仰/白髭水の伝説/天理教と泥海/飢饉の年/他
2 流行神と世直し
常世神と志多羅神/鍬神信仰/大杉明神/エエジャナイカの底流/弥勒踊りと世直し/他
3 流行神とメシアニズム
山伏・行人の取締/木食聖の行脚/徳本の念仏講/大奥と結ぶ徳本/メシアは出現せず/他
Ⅴ 流行神の構造
1 民俗神道としての流行神
人面犬/人面木/アストンの民俗神道論/男根の神
2 人神と祀り棄て
人神/人霊/祀り棄て/時花神/ホーソー神/ホーソー祭り
主要参考文献
流行神関係年表
文庫版あとがき
解説(小松和彦)