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親鸞とマルクス主義

闘争・イデオロギー・普遍性

近現代日本において、マルクス主義と交差した局面で構築された親鸞論に注目し、「親鸞を語る」という営為の思想史的意義を検証する。

著者 近藤 俊太郎
出版社 法藏館
ジャンル 歴史・資料 > 歴史
出版年月日 2021/08/25
ISBN 9784831855657
判型・ページ数 A5・544ページ
定価 本体7,500円+税
在庫 在庫あり
近現代日本のマルクス主義と交差した諸局面で構築された多くの親鸞論。その変遷を手がかりに、「親鸞を語る」という営為が語り手にもたらす思想経験を問い、その語りをもたらした近代という時代の歴史的経験に迫る。
序 章 親鸞とマルクス主義への入射角
 一 本書の課題
   (1)親鸞と親鸞理解/(2)親鸞理解の近代史における単線化傾向/(3)親鸞とマルクス主義へ
 二 新たな親鸞理解の構築
   (1)真宗教団と親鸞像/(2)神話から歴史へ/(3)『歎異抄』と実存
 三 親鸞理解と仏教理解
   (1)主体の変容/(2)普遍性と否定性/(3)マルクス主義の問題圏
 四 本書の構成

第Ⅰ部 仏教とマルクス主義―解放と阿片の間―
第一章 高木顕明と初期水平運動の親鸞―非戦と平等をめぐって―
 はじめに
 一 高木顕明の親鸞―非戦と平等と平民―
   (1)高木顕明とは誰か/(2)「余が社会主義」―念仏の実践性―
 二 「親鸞聖人の正しい見方」とは何か―親鸞像の形成と封殺―
   (1)親鸞と本願寺の間/(2)大谷尊由の親鸞―「法悦」としての「同朋主義」/(3)大谷光瑞の親鸞―「宿業」による秩序の肯定
 三 初期水平運動の親鸞―社会改造の実践原理―
   (1)西光万吉の親鸞―還相回向と「自由の王国」/(2)栗須七郎の親鸞―「貴族仏教の破壊」―/(3)水平性の内実―梅原真隆『浄土真宗』を手がかりに―
 おわりに

第二章 反宗教運動と仏教
 はじめに
 一 反宗教運動の歴史的前提
   (1)御大典記念日本宗教大会と教化総動員運動/(2)宗教批判理論の輸入と整備
 二 反宗教運動の出発
   (1)反宗教闘争同盟準備会の活動/(2)反宗教闘争同盟準備会の特質―運動の対象・方法・展開―/(3)日本戦闘的無神論者同盟と国家神道批判
 三 反宗教運動への応答
   (1)反宗教運動の概観/(2)宗教批判への共感/(3)対抗組織の結成/(4)反宗教運動への反論

第三章 佐野学の宗教論―宗教批判と親鸞理解―
 はじめに
 一 親鸞思想とマルクス主義の重層―初期水平運動期―
   (1)全国水平社創立前後/(2)「革命的宗教家」としての親鸞/(3)宗教排除への傾斜
 二 マルクス主義の宗教批判とその方法―反宗教運動前夜―
   (1)日本共産党創立期/(2)宗教批判
 三 「完全転向」の切り札としての親鸞―刑務所時代―
   (1)転向前後/(2)宗教理解の修正/(3)日本主義と親鸞理解の再構築
 四 「仏教社会主義」と親鸞―戦後の思想課題への応答―
   (1)敗戦後/(2)忘れ去られた戦後親鸞論/(3)「仏教社会主義」と「利他的闘争」
 おわりに
   (1)小括/(2)佐野の思想経験から見る近代的二元論

第Ⅱ部 戦時日本の親鸞―危機の時代との向き合い方―
第四章 戦時下本願寺の聖典削除と皇国宗教化
 はじめに
 一 聖典削除問題への道程
   (1)問題の背景/(2)宗教の日本主義下と世界性
 二 削除指示と反対の動き―消された親鸞をめぐって―
   (1)「心得」とそれへの批判/(2)「内示趣旨」とそれへの批判
 三 聖典削除の彼方
   (1)中央官庁と本願寺派の対応/(2)皇国宗教化論の浮上
 四 宗教団体法と真宗本願寺派宗制
   (1)宗制の改正/(2)『宗制釈義』
 五 戦時教学の最終形態
   (1)戦時教学関係機関の設置/(2)「皇国宗教としての浄土真宗」
 おわりに

第五章 戦後親鸞論への道程―マルクス主義という経験を中心に―
 はじめに―戦後仏教史研究とマルクス主義―
 一 マルクス主義の宗教批判とその意味
   (1)マルクス主義の宗教批判/(2)日本におけるマルクス主義の意味
 二 国体論と親鸞―日本精神の顕現として―
   (1)『国体の本義』の親鸞―日本精神への解消―/(2)暁烏敏の親鸞―神道的解消―/(3)三井甲之の親鸞―「臣道」への解消
 三 反宗教運動と親鸞―支配階級に奉仕するもの―
   (1)「マルクス主義と宗教」論争―三木清と服部之總を中心に―/(2)反宗教闘争同盟準備会の本願寺教団批判/(3)反宗教論と親鸞―永田広志・本間唯一・岩倉政治・浅野研真・高津正道―/(4)反宗教運動と真理の再生―妹尾義郎と柏木義円―/(5)小括
 四 家永三郎の親鸞―「否定の論理」の完成者として―
   (1)家永像の再検討/(2)思想形成―家永親鸞論の前提―/(3)「否定の論理」と親鸞/(4)「否定の論理」の戦時的読解―普賢大円の場合―/(5)小括
 五 服部之總の親鸞―農民とともにあるということ―
   (1)『親鸞ノート』の衝撃/(2)「呪はれたる宗門の子」の袂別/(3)親鸞と「宗教改革」―川崎庸之の親鸞論との関係から―/(4)本願寺教団論と民衆への絶対的信頼

第Ⅲ部 戦後日本の親鸞―起動する社会的実践―
第六章 二葉憲香の親鸞論―仏教の立場に立つ歴史学―
 はじめに
 一 二葉仏教史学の方法―仏教史観―
   (1)仏教史学の課題/(2)仏教の立場に立つ歴史学
 二 二葉憲香の親鸞―「非権力的自律社会」に向かって
   (1)非我と対決/(2)社会的実践/(3)歴史のなかの親鸞
 三 二葉仏教史学の実践性
   (1)神社問題/(2)「部落差別と宗教」研究会/(3)家永教科書裁判
 四 二葉仏教史学の特質
   (1)顕密体制論批判/(2)二項対立と普遍的主体
 おわりに

第七章 戦後日本における反靖国運動と親鸞
 はじめに
 一 反靖国運動の前提
   (1)昭和戦前期の本願寺派/(2)敗戦後の本願寺派
 二 靖国神社法案提出とその背景
   (1)自民党による靖国神社法案の提出/(2)靖国神社法案提出の前史と背景
 三 靖国神社国家護持をめぐる論争
   (1)靖国神社国家護持と仏教教団/(2)『中外日報』での論争―二葉憲香と葦津珍彦を中心に―
 四 反靖国運動の展開と親鸞
   (1)靖国問題と自己変革/(2)教団改革をすすめる会―国家権力と親鸞―/(3)浄土真宗本願寺派反靖国連帯会議―「内なる靖国」の克服と「神祇不拝の精神」/(4)真宗遺族会―「いのちの尊厳と平等」の確立/(5)裁判闘争への展開
 おわりに

補 論 近代真宗史への入射角―宗教的立場と社会的立場の二元論とその超克―
 はじめに―原体験としての一九九五年―
 一 「精神主義」の読み方
 二 マルクス主義の宗教批判と仏教
 三 家永三郎の「否定の論理」とその受容史
 四 二葉憲香の仏教史学とその方法
 おわりに―普遍性と立場性―

結 章 まとめと展望―親鸞・マルクス主義・近代―
 はじめに―「親鸞認識の方法」をめぐって―
 一 親鸞とマルクス主義―闘争の行方―
   (1)親鸞理解の歴史/(2)宗教的立場と社会的立場の二元論
 二 マルクス主義と近代―イデオロギーの扱い方―
   (1)闘争と孤立/(2)理論信仰と生の次元
 三 親鸞と近代―危機意識と普遍性―
   (1)親鸞という経験/(2)思想としての親鸞論
 おわりに―課題展望―

初出一覧/図版出典一覧/あとがき
人名索引/事項索引

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